はじめに
この章では、ASTM の概要と、ASTM に対する Ensemble のサポートについて説明します。この章は以下の節で構成されています。
ASTM の概要
米国材料試験協会 (ASTM : American Society for Testing and Materials) は、医療機器とコンピュータ・システム間で情報を転送するための規格を定めました。規格 ASTM E1394–97 は、医療機器とコンピュータ・システム間のリモート要求および結果の双方向デジタル送信を対象範囲としています。この仕様は、ドキュメントの内容の構造化、およびこれらの構造の中に含まれるデータ要素の表現についての規則を定めています。下位レベルの通信プロトコルやデータ転送の要件についての規則を定めたものではありません。下位レベルのデータ転送通信の規格については、別の規格 (ASTM E1381–02) に詳しく記載されています。Ensemble ASTM パッケージでは、両方の規格をサポートしています。詳細は、Web サイト http://www.astm.org/Opens in a new tab を参照してください。
ASTM はその後、これらの規格を維持管理する責任を、臨床検査標準協会 (CLSI : Clinical and Laboratory Standards Institute) に移譲しました。これらの規格の詳細は、Web サイト http://www.clsi.orgOpens in a new tab を参照してください。Ensemble では、両方の組織による以下の規格をサポートしています。
元々 ASTM が定めた規格 :
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ASTM E1381-02 Standard Specification for Low-Level Protocol to Transfer Messages Between Clinical Laboratory Instruments and Computer Systems (2002 年に撤退)
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ASTM E1394-97 Standard Specification for Transferring Information Between Clinical Instruments and Computer Systems (2002 年に撤退)
CLSI による後継規格 :
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LIS01-A2 Specification for Low-Level Protocol to Transfer Messages Between Clinical Laboratory Instruments and Computer Systems;Approved Standard - Second Edition
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LIS02-A2 Specification for Transferring Information Between Clinical Instruments and Computer Systems; Approved Standard- Second Edition
説明を簡略化するために、このドキュメントではこれ以降、すべての形式によるサポート対象の規格を指して ASTM という用語を使用します。
Ensemble による ASTM ドキュメントのサポート
Ensemble は ASTM ドキュメントを仮想ドキュメントとしてサポートしています。仮想ドキュメントはメッセージの一種で、Ensemble では部分的にのみ解釈されます。この種のメッセージは、標準の Ensemble メッセージ・ヘッダと標準のメッセージ・プロパティ (ID、Priority、SessionId など) で構成されています。しかし、メッセージ内のデータはメッセージ・プロパティとして提供されず、代わりに、処理速度を向上させるために内部使用のグローバルに直接格納されます。
Ensemble は、仮想ドキュメント内のデータにアクセスしてデータ変換、ビジネス・ルール、およびメッセージの検索とフィルタリングに使用するためのツールを提供しています。基礎的な情報は、"Ensemble 仮想ドキュメント" を参照してください。
ASTM の通信の詳細
ASTM は、市民バンド無線のように、半二重の非同期通信を使用します。回線上で一度に通信できるのは一方のみですが、どちらの側も通信を開始できます。通信が開始すると、接続が存在する場合は、双方で交渉してどちらがデータを先に送信するかを決定します。一般的には、検査機関のデバイスが先に送信します。ASTM を使用するデバイスは、単一の TCP ソケットを使用して Ensemble のビジネス・サービスと通信します。その単一の TCP ソケットは、Ensemble とデバイス間の双方向の通信に使用されます。
これらの理由のため、ASTM ビジネス・サービスは、以下の両方を実行できる必要があります。
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TCP を介した通信の受信 (およびそれに関連する応答の送信)
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TCP を介した通信の開始 (およびそれに関連する応答の受信)
これは、ドキュメントの受信および関連付けられた応答を返すだけであった Ensemble ビジネス・サービスの構造的役割からの飛躍です。Ensemble の構造では、ビジネス・サービスは、Ensemble 外部で通信を開始することはできません。ビジネス・サービスは、受信したドキュメントに応答することは許可されていますが、Ensemble 外部のエンティティとの交換を開始することはできません。
ASTM のこの制約に適応するため、Ensemble には、ASTM ビジネス・サービスと共に使用できる特定の目的のビジネス・オペレーションが用意されています。このビジネス・オペレーションは、受信する ASTM ビジネス・サービスをパートナー・サービスとして識別します。Ensemble プロダクションの任意のメンバが外部デバイスへの通信を開始する必要があるときは、いつでもこのビジネス・オペレーションを呼び出して、通信をそのパートナー・サービスに送信します。これにより、内部メッセージに対する Ensemble の規則 (ビジネス・サービスは、ビジネス・プロセスまたはビジネス・オペレーションのみにメッセージを送信できる) が保持されますが、ASTM の規則 (デバイスでは 1 つの TCP ソケットのみが利用でき、この TCP 接続の相手側は Ensemble ビジネス・サービスである) も実現できます。
以下の節では、ビジネス・サービスとビジネス・オペレーションのこれらの規則が 2 つの状況でどのように機能するのかについて説明します。どちらも、ASTM と Ensemble を使用する際に役立ちます。
TCP 上で ASTM を使用することによる、デバイスへの接続
Ensemble は、以下のようなシナリオで、ASTM プロトコルを使用するデバイスと TCP を介して通信できます (これらのシナリオはいずれも同じプロダクションで発生する可能性があります)。
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シナリオ 1 : 受信および応答。このシナリオでは、ビジネス・サービスとビジネス・プロセスが必要です。
デバイスから着信する受信ドキュメントは TCPServiceTwoWay ビジネス・サービスを介して Ensemble に取り込まれます。ビジネス・サービスは、サービス自体の構成済みビジネス・プロセスである WorkAndRouteProcess にドキュメントを転送します。他のビジネス・プロダクションの場合と同様に、ビジネス・プロセスは、ルーティング・ルール、データ変換、ビジネス・オペレーション、またはその他のビジネス・プロセスを呼び出すことができます。最終的には、この処理の結果として、ビジネス・プロセスに応答が渡されます。この応答は、WorkAndRouteProcess から TCPServiceTwoWay ビジネス・サービスに渡され、さらにデバイスに渡されます。
このシナリオで示すように、ビジネス・プロセスから返される応答をビジネス・サービスが待たないように、プロダクションを設定できます。代わりに、TCPServiceTwoWay から WorkAndRouteProcess への要求は非同期になり、WorkAndRouteProcess によってトリガされるアクティビティが実行されている間、これらの両方の構成項目は別の処理を実行できます。これらのアクティビティの結果として最終的に応答が準備されると、WorkAndRouteProcess は、シナリオ 3 で説明するように、通信を開始し、応答ドキュメントをデバイスに返すことができます。
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シナリオ 2 : 外部ファイルとしての受信ドキュメントのアーカイブ。このシナリオでは、ビジネス・サービスとオペレーションが必要です。
Ensemble では、すべての着信および送信メッセージ・データを自動的にアーカイブしますが、特に、テスティングの目的で行っています。外部ファイルとして Ensemble の外部でドキュメントを捕捉できると、便利な場合があります。TCPServiceTwoWay ビジネス・サービスでは、単純なパススルー・インタフェースを介して FileOperationArchive ビジネス・オペレーションに受信ドキュメントを送信できます。FileOperationArchive は、このドキュメントを、ローカル・システム上の構成済みのディレクトリにファイルとして保存します。このシナリオは、このリストに挙げる他の 2 つのシナリオのいずれか、または両方と簡単に共存できます。
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シナリオ 3 : デバイスでの送信および応答の受信。このシナリオでは、ビジネス・サービス、ビジネス・プロセス、およびビジネス・オペレーションが必要です。
デバイスに期待される規則に応じて、デバイスが通信を生成する前に、デバイスではなく Ensemble が 接続を開始してデバイス・データを送信することが重要になる場合があります。メッセージを開始するためのロジックが、ビジネス・プロセス WorkAndRouteProcess で開始されると仮定します。この構成項目は、内部の Ensemble メッセージを TCP ビジネス・オペレーション TCPOperationInitiate に送信します。このビジネス・オペレーションは、パートナー・サービス TCPServiceTwoWay を使用して、ペイロード・ドキュメントをこのメッセージからデバイスに送信します。このデバイスから応答がある場合は、TCPServiceTwoWay を経由して届き、応答に適切に指示が与えられます。応答は、WorkAndRouteProcess による別のアクティビティをさらにトリガする可能性がありますが、詳細の決定は開発者に委ねられています。
デバイスを使用しない ASTM インタフェースのテスティング
デバイスを接続することなく、ASTM インタフェースをテストできます。デバイスとの間で送受信する ASTM ドキュメントをいくつかテキスト・ファイルとして保存する必要があります。これらのドキュメントを使用して、以下の手順でスループットをテストできます。
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デバイスからのドキュメントの着信のシミュレーション (および TCP ビジネス・サービスのテスト) を行うには、ファイル・ビジネス・サービスと TCP ビジネス・オペレーションを使用します。
このビジネス・サービスが、構成済みの受信ディレクトリからテキスト・ファイルを見つけ出し、ファイルを TCP ビジネス・オペレーションに転送します。それにより、TCP ビジネス・オペレーションから TCP ビジネス・サービスへのメッセージの送信が可能になります。
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ドキュメントの処理をシミュレートするには、ビジネス・サービス (TCPServiceListen) を使用して、着信する ASTM ドキュメントを受信します。この構成項目は、ドキュメントをビジネス・プロセス (GenerateReplyProcess) に送信します。このテストはシミュレーションであるため、ビジネス・プロセスは、単純な文を使用して汎用的な ASTM 応答ドキュメントを生成する通常の BPL ビジネス・プロセスであってもかまいません。その後、ビジネス・プロセスはこの応答をビジネス・サービスに返します。
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デバイスへの応答をシミュレートするには、ビジネス・サービス (TCPServiceListen) を使用して、ビジネス・オペレーション (デバイスを表す TCPServiceConnect) に応答を送信します。これはテストであり、結果を明確に確認したいため、TCPServiceConnect からファイル・ビジネス・オペレーションに応答を転送して、更新済みの送信ディレクトリにテキスト・ファイルを出力します。