Caché 複数インスタンスの使用法
Caché の複数のインスタンスを 1 つのホスト・システムにインストールして実行できます。各インスタンス は、独立した一意の Caché 環境です。この章では、以下の項目について説明します。
Caché インスタンス
Caché インスタンスに接続する方法は多数あります。最も一般的なのは、Cach ランチャーから接続する方法 (Windows プラットフォームの場合のみ) と、コンソールのコマンド行から接続する方法です。
Windows マシンにインストールされた Caché インスタンスは、それぞれに専用のランチャーを備えています。すべてのランチャー・ユーティリティ機能は、そのランチャーに関連のあるインスタンスのコンテキスト内で動作します。
各 Caché インスタンスをインストールするたびに、インスタンス名を指定します。特定の Caché インスタンスに対してコマンドライン・プロシージャを実行するには、この名前を使用します。それぞれのインスタンスを単独で、開始、停止、および管理できます。以下のテーブルは、Caché インスタンスを操作する最も一般的なコマンドです。
希望の動作 | Caché コマンド |
---|---|
Caché インスタンスの開始 |
ccontrol start instname |
Caché インスタンスの接続 |
csession instname |
Caché インスタンスの中止 |
ccontrol stop instname |
これらのコマンドの詳細については、"Caché インスタンスの接続" (csession) および "Caché インスタンスの制御" (ccontrol) を参照してください。
Caché ランチャーから、複数のリモート Caché 環境をコントロールすることもできます。Caché は、リモート・システムのすべてのデータを作成および編集できます。リモート・バックアップの実行、リモート・インスタンスの編集、リモート・オブジェクトやリモート・ルーチンの作成とコンパイルなどが可能ですが、これら以外の機能もあります。詳細は、このガイドの “リモート・サーバへの接続” の章を参照してください。
Windows プラットフォームの場合は、Windows サービスの管理ツールを使用して、Caché のインスタンスを開始、停止、および再開始することもできます。そうするには、この管理ツールで、そのインスタンスの Caché コントローラ・サービスを開始、停止、および再開始します。ただし、インタラクティブに暗号化キーを有効化するようにスタートアップが構成されたインスタンスを開始するために、この方法を使用することはできません ("Caché セキュリティ管理ガイド" の “マネージド・キー暗号化” の章にある "インタラクティブにキーを有効化する起動の構成" を参照)。この方法では、必要な資格情報を入力できなくなるためです。
UNIX® プラットフォームでは、Caché インスタンスを停止または再起動するか、強制的にダウンさせた場合、そのインスタンスは、すべてのプロセスが共有メモリからアタッチ解除されるまで最大で 30 秒待機します。30 秒が経過すると、インスタンスは閉じます。インスタンスが閉じた後にまだ共有メモリにアタッチされているプロセスがある場合、インスタンスの再起動は失敗します。
Caché インスタンスの接続
Caché を起動した後、コマンド・ラインで csession コマンドを使用して Caché にログインできます。
csession <instname> [arguments]
instname は管理しているインスタンスの名前、 [arguments] は以下のテーブル内で説明されている 1 つ以上のオプション引数を示します。Windows システムでは、Caché インスタンスの install-dir\bin ディレクトリからこのコマンドを実行するか、例えば以下のようにコマンドにフルパスを含める必要があります。
C:\InterSystems\Cache27\bin\csession Cache33
先の例で示したように、指定するインスタンス名は、実行している csession バイナリのインスタンスとは異なっていてもかまいません。ただし、同じ名前であっても、常に指定する必要があります。
コマンド | 概要 |
---|---|
csession instname -B |
システム管理者の緊急ログイン用です。
Note:
Windows で緊急起動を実行するには、[管理者として実行] オプションを使用してコマンド・プロンプトを開く必要があります。緊急アクセス・モードでの Caché の起動およびログインに関する詳細は、"Caché セキュリティ管理ガイド" の “システム管理およびセキュリティ” の章にある "緊急アクセス" も参照してください。 |
csession instname -U namespace | ログイン・ネームスペースを指定します。
Note:
[開始ネームスペース] が指定されているユーザ・アカウントで Caché を開始した場合は、-U に効果はありません ("Caché セキュリティ管理ガイド" の “ユーザ” の章にある "ユーザのプロパティ" を参照)。 |
csession instname -b partition_size | プロセスの最大パーティション・サイズ (KB) を指定します。 |
csession instname "[label[+offset]]^routine" |
ユーザ・モードで実行する COS プログラムの名前を指定します。 指定の形式のほかに、文字列または数値リテラルで構成するパラメータ、および省略 (void) パラメータを以下のように渡すことができます。
ここでは例えば、parameter-list を "string literal",,-+-000123.45600E+07 の形式で指定し、省略パラメータは $Data(parameter)=0 としてターゲットへ渡します。
Note:
空白やシェル・メタ文字は、オペレーティング・システムに依存する形式で引用する必要があります。 |
リモート・サーバ上の csession コマンドまたは ccontrol コマンド ("Caché インスタンスの制御" を参照) を使用するには、csession またはターミナルを使用するか、ターミナルまたは Telnet/ssh クライアントを通じたリモート接続を使用します。
Caché インスタンスの制御
ccontrol コマンドを使用して、Caché のインスタンスを制御できます。ccontrol コマンドは多くの機能をサポートします。以下の構文を使用します。
ccontrol <function> <instname> [arguments]
instname は、インストール時に選択したインスタンス名です。
ccontrol コマンドの実行に関する最新のヘルプ・ファイルを表示するには、ccontrol help を呼び出します。Windows では、install-dir\Bin ディレクトリからこのコマンドを実行します (または、コマンドにフルパスを含めます)。
C:\InterSystems\Cache27\bin>ccontrol help
この ccontrol help コマンドによってブラウザに CcontrolHelp.html ファイルが表示されます。このファイルは install-dir\Help ディレクトリにあります。
[arguments] で示されているオプションの引数は、以下のとおりです。
-
quietly — 表示するダイアログを最小限として、対話処理を行いません。
-
nostu — スタートアップ・ルーチンを実行しません (^STU)。
-
help — ヘルプ・メッセージを印刷し終了します。
-
restart — シャットダウンを正常に完了した後、Caché を起動します (stop 機能の場合のみ。Microsoft Windows プラットフォームでは使用できません)。
リモート・サーバ上の ccontrol コマンドまたは csession コマンド ("Caché インスタンスの接続" を参照) を使用するには、Telnet または ssh クライアントを使用するか、ターミナルを使用します。
以下のテーブルでは、ccontrol コマンドの一般的な使用例を示します。
ccontrol コマンドには他にもプラットフォーム固有の機能があり、help 機能で表示できますが、InterSystems で内部的に使用されている機能はヘルプ表示には表示されません。
コマンド | 概要 |
---|---|
ccontrol start instname [args] | インスタンス instname を開始します。
Note:
“緊急モード” での起動を求めるメッセージが表示される場合があります。その場合は、"Caché セキュリティ管理ガイド" の “システム管理およびセキュリティ” の章にある "緊急アクセス" を参照してください。 |
ccontrol start instname [.cpf ファイルのフル・パス名] | 指定された name.cpf ファイルを必要に応じて使用し、Caché インスタンスの instname を起動します。name.cpf ファイルが指定されていない場合、Caché インスタンスでは cache.cpf ファイルを使用します。 |
ccontrol start instname nostu | Windows 以外のすべてのプラットフォームで、^STU を実行せずに、指定したインスタンスを開始します。 |
ccontrol startnostu instname | Windows で、^STU を実行せずに、指定したインスタンスを開始します。 |
ccontrol stop instname [args] | インスタンスをシャットダウンします。 |
ccontrol stopnoshut instname 4 | INTNOSHUT^SHUTDOWN を使用し、指定したインスタンスをシャットダウンします。 |
ccontrol stopstart instname | 指定したインスタンスをシャットダウンし、再起動します。 |
ccontrol force instname | インスタンスを強制終了します。 |
ccontrol list |
インストールされているすべてのインスタンスについて、以下の情報をリストします。
|
ccontrol qlist | 各インスタンスについて ccontrol list と実質的に同じ情報に加えて JDBC ゲートウェイ・ポートの情報もリストしますが、ラベルは含まれません。すべての情報は以下に示す順序で 1 行にまとめられ、キャレット (^) で区切られます。コマンド行で単一のインスタンスを指定すると、そのインスタンスの情報のみを表示できます。
|
ccontrol all 1 |
インストールされているすべてのインスタンスについて、以下の情報をリストします (1 行につき 1 インスタンス)。
|
ccontrol allw | それぞれのインスタンスに対して同じ情報を ccontrol all としてリストしますが、長いフィールド値はラップしません。行の長さは 80 文字以上になる場合があります。 |
ccontrol qall | Windows 以外のプラットフォームでは、それぞれのインスタンスに対して同じ情報を ccontrol all としてリストしますが、長い行は 78 文字に終了チルダ (~) 1 つを加えた長さに切り捨てられます。 |
ccontrol stat instname [args] | システム統計を検索します。これは、cstat ユーティリティと同じです ("監視ガイド" の付録 “cstat ユーティリティを使用した Caché の監視” を参照)。ccontrol stat は Windows では使用できませんが、cstat は使用できます。 |
ccontrol help | ccontrol コマンドの最新情報を表示します。 |
ccontrol help [start | stop | force] | 起動、シャットダウン、および強制終了の各機能に固有のヘルプを提供します。 |
ccontrol rename instname {newname} | インスタンスの名前を変更します (Windows システムでは使用できません)。 |
ccontrol [run | console | cterminal] instname | $Principal の代わりに、デバイスなし、コンソール、ターミナルのいずれかを使用して、Caché をプログラマ・モードで実行します (Windows のみ)。5 |
ccontrol [run | console | cterminal] instname routine | $Principal の代わりに、デバイスなし、コンソール、ターミナルのいずれかを使用して、指定の Caché ルーチンをアプリケーション・モードで実行します。(Windows のみ)。5 |
ccontrol [run | console | cterminal] instname routine namespace3 | $Principal の代わりに、デバイスなし、コンソール、ターミナルのいずれかを使用して、指定の Caché ルーチンを指定ネームスペースにアプリケーション・モードで実行します。(Windows のみ)。5 |
ccontrol runw instname routine [namespace3] | $Principal の代わりに、入出力デバイスなしを使用して、指定の Caché ルーチンを指定ネームスペース (ある場合) でアプリケーション・モードで実行します (Windows のみ)。バッチ・スクリプトから実行する場合は、ccontrol は Caché プロセスが終了するのを待機してから戻ります。 Caché プロセスからの終了コードは ccontrol によって返されます。5 |
1 解析やレポートのために完全な情報が必要な場合は、ccontrol list を使用します。
2 (削除されました)
3 namespace のプロパティに値を持つユーザ・アカウントで Caché を起動している場合は、namespace 引数を設定しても反映されません。ユーザ・アカウントの管理の詳細は、"Caché セキュリティ管理ガイド" の “ユーザ” の章を参照してください。
4 owner および cacheusr のみが csession ログインなしで SHUTDOWN を実行できます。
5 UNIX®/Linux システムでは、これらのタスクは csession コマンドを使用して実行します ("Caché インスタンスの接続" を参照)。
複数の Caché インスタンスの構成
1 台のマシンに、Caché 4.0 およびそれ以降のバージョンのインスタンスを複数インストールし、同時に実行できます。単一のインストールとして Caché をインストールする場合は、各インスタンスに一意の名前、一意のインストール・ディレクトリ、およびスーパーサーバ、Web サーバ、および Telnet 用の一意のポート番号を指定します。
複数のインスタンスに関する特別な考慮事項は以下のとおりです。
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各インスタンスは、Caché バージョン 4.0 かそれ以降の構成である必要があります。例えば、Caché 5.1 と 3.2.1 は同じマシンで同時に実行できません。
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複数のインスタンスで、同じマルチサーバ・キーを共有できます。しかし、その場合は同じ 1 つのあるいは 1 組みのライセンス・サーバを使用する必要があります。1 つ以上のライセンス・サーバの下で Caché インスタンスを実行するそれぞれのシステムのローカルには、インスタンスごとに認証ライセンス・キー・ファイルのコピーがインストールされている必要があります。
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複数のインスタンスはネットワーク接続できます。
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データベースは、同時に複数のインスタンスからは使用できないように保護されています (各インスタンスは個別にデータベースが必要です。他のインスタンスのデータベースにアクセスしたり修正することはできません)。
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各インスタンスには一意のポート番号が必要です。ポート番号の設定方法の詳細は、次のセクションを参照してください。
Windows プラットフォームに Caché インスタンスを複数インストールする場合は、"Caché インストール・ガイド" の "複数の Caché をインストールする場合" を参照して要点の確認をしてください。
ポート番号の設定
標準では、単一の Caché インスタンスのスーパーサーバのポート番号の既定は 1972 です。1 台のマシンに Caché 4.0 やそれ以降のバージョンのインスタンスを複数設定する場合、それぞれに一意のポート番号が必要です。自動的にポート番号を設定するようにした場合、後続のインスタンスには次に使用可能な番号がインストール中に割り当てられます。また、インストール中に手動でポート番号を入力することもできます。標準のインストールでは、Caché インスタンスに以下のポート番号が設定されます。
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スーパーサーバのポート番号 — 1972、または 56773 以降の使用可能な最初のポート番号
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Web サーバのポート番号 — 57772、またはこれ以降の使用可能な最初のポート番号
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Telnet ポート番号 — 23
Caché インストールの際にスーパーサーバまたは Web サーバにポート番号が割り当てられるため、たいていの場合はこれらのポート番号を変更する必要はありません。ただし、各インスタンスに一意の Telnet ポート番号は割り当てる必要はあります。管理ポータルの [メモリと開始設定] ページ ([システム管理]→[構成]→[システム構成]→[メモリと開始設定]) から、インストール後にスーパーサーバのポート値を変更できます。また、管理ポータルの [開始設定] ページ ([システム管理]→[構成]→[追加設定]→[開始]) および [Telnet 設定] ページ ([システム管理]→[構成]→[デバイス設定]→[Telnet 設定]) から、インストール後にそれぞれ Web サーバおよび Telnet ポートの値を変更できます。
1 台のマシンで複数の Caché インスタンスを頻繁に使用および管理する場合、それぞれに一意のポート番号が割り当てられていることを確認します。一意のポート番号を割り当てることによって、1 つの Windows クライアントから複数のインスタンス上の Caché ランチャー・ツールを使用する際の混乱を回避できます。