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InterSystems IRIS 2020.1 の新機能

このドキュメントでは、InterSystems IRIS® の 2020.1 リリースの新機能と機能強化について説明します。2019.1.0 バージョンにはなかった 2020.1 の新機能を取り上げます ("InterSystems IRIS 2019.1 の新機能" を参照)。これらの機能のうちいくつかは、2019.1 メンテナンス・リリース、または 2019.2、2019.3、2019.4 の継続配布リリースで初めて導入されました。これらの機能については、説明の中で示しています。以下のセクションでは、2020.1 リリースとその新機能および機能強化について説明します。

InterSystems IRIS の継続配布リリース

InterSystems IRIS 2020.1 は InterSystems IRIS の拡張メンテナンス・リリースであると同時に、継続配布リリースでもあります。現在、InterSystems IRIS のリリースには以下の 2 つのストリームがあります。

  • 継続配布リリース — これらのリリースでは新機能へのアクセスを提供します。クラウドまたはローカルの Docker コンテナでアプリケーションを開発および導入する場合に適しています。

  • 拡張メンテナンス・リリース — これらのリリースは、継続配布リリースほど頻繁ではありませんが、安定性が向上したメンテナンス・リリースを提供します。新機能に早期にアクセスできることよりも、メンテナンス・リリースで修正を簡単に入手できることの方が重要な大規模エンタープライズ・アプリケーションに最適です。

継続配布リリースはコンテナ形式で、Amazon Web Services (AWS)、Google Cloud Platform (GCP)、Microsoft Azure、Docker Hub、およびインターシステムズ WRC のダウンロード・サイトから提供されます。継続配布リリースは、これらのいずれかのクラウド・プラットフォームで、または Docker コンテナを使用してローカル・システムで実行できます。インターシステムズでは、継続配布リリースのメンテナンス・リリースは提供していませんが、代わりに後続の継続配布リリースで問題を修正しています。

初期の主要な拡張メンテナンス・リリースは、UNIX、Windows、クラウド・プラットフォーム、Docker コンテナなど、すべての InterSystems IRIS サポート対象プラットフォームで提供されます。その後のメンテナンス・リリースは、InterSystems IRIS サポート対象プラットフォームのすべてのサーバおよびクラウド・プラットフォームで提供されますが、Docker コンテナでは提供されません。Docker コンテナを使用している場合は、継続配布リリースにアップグレードできます。

アプリケーションが非コンテナ・プラットフォームで実行されている場合、そのアプリケーションには拡張メンテナンス・リリースしか使用できませんが、以下の場合は、継続配布リリースの使用を検討できます。

  • 新機能を評価し、カスタム・コードをテストする場合。次の拡張メンテナンス・メジャー・リリースにアップグレードする際に、アップグレード・コストを削減できます。

  • クラウドまたはローカル・コンテナに導入できる新規プロジェクトに使用する場合。

インターシステムズでは、完全にサポートされるリリースを提供する以外にも、新機能をいち早く確認したい開発者向けにプレリリース・ソフトウェアへのアクセスも提供しています。

API 管理

このリリースには、次の 2 つの新しい API 管理機能が含まれます。

InterSystems API Manager

このリリースには、Web ベースの API との間のトラフィックの監視と制御を可能にする InterSystems API Manager (IAM) が含まれています。API Manager は、メンテナンス・リリース 2019.1.1 と継続配布リリース 2019.2 でリリースされました (2019.2 の初期バージョンには API Manager は含まれません)。

サービス指向アプリケーション層を構築している場合、使用している API の数が急速に増えていると感じることがよくあります。環境の分散が大きいほど API トラフィックの適切な管理と監視の重要性が増します。API Manager により、一元化されたゲートウェイを介してすべてのトラフィックを簡単にルーティングしたり、API 要求を適切なターゲット・ノードに転送したりすることができます。これにより、以下が可能になります。

  • すべての API トラフィックを一元的に監視します。

  • 使用している API と API を提供するサーバのリストを計画、文書化、および更新します。

  • 問題が深刻になる前に特定します。

  • スループットを制限し、許可されるペイロード・サイズを構成し、IP アドレスとドメインをホワイトリストとブラックリストに登録し、エンドポイントをすばやくメンテナンス・モードにすることで、API トラフィックを制御します。

  • カスタマイズ可能な専用の開発者ポータルでインタラクティブな API ドキュメントを提供し、社内外の開発者の研修を行います。

  • API を一元的にセキュリティ保護します。

API Manager には相互運用性、信頼性、直感的操作性、拡張性が備わっています。すべての構成をシンプルな Web ベースのユーザ・インタフェースを使用して実行できますが、API 呼び出しを使用して API Manager を構成することもできるため、リモート導入を容易に実行できます。

API Manager は、独自のコンテナでリリースされます。API Manager は複数ノードのクラスタとして構成できますが、単一ノードでも毎秒何万もの要求の負荷を処理できます。

詳細は、"InterSystems API Manager" を参照してください。

Open API/Swagger 仕様優先の REST 開発

このリリースでは、API 管理サービスを強化し、OpenAPI 2.0 仕様から REST サービスの ObjectScript コードを生成できるようにしました。生成されたこのコードが、受信した REST 呼び出しを処理するため、ユーザはサービスで実行される特定機能を実行するカスタム・コードを記述するだけで済みます。OpenAPI 2.0 仕様で既に定義されているサービスを実装する場合、作業が大幅に削減されます。既存の OpenAPI 2.0 仕様がない場合でも、REST API の定義に必要なカスタム・コードを記述するよりは、新しい仕様を作成する方がはるかに簡単です。また、この仕様はドキュメントも提供しており、サービスのクライアント・コードを開発するすべてのユーザを支援します。詳細は、"REST サービスの作成" を参照してください。(初リリース 2019.2)

Caché と Ensemble からのインプレース変換

InterSystems IRIS のこのリリースでは、Caché または Ensemble の既存のインスタンスを InterSystems IRIS に変換できます。変換プロセスでは、アプリケーション・コード、構成スクリプト、およびその他のプロシージャに対して多少の変更が必要になる場合がありますが、ほとんどの場合は比較的簡単なものです。他のメジャー・アップグレードの場合と同様、任意のプロダクション・ビジネス・サービス、プロセス、およびオペレーションを含むカスタム・コードを、実際の実稼働環境へ配置する前に、テスト環境で十分にテストする必要があります。

インプレース変換を実行する前に、"InterSystems IRIS インプレース変換ガイド" と "InterSystems IRIS 導入ガイド" を読んで、Caché または Ensemble と InterSystems IRIS の違いに関するバックグラウンド情報を把握しておくことが重要です。これらのドキュメントは、インターシステムズのサポート窓口のドキュメント配布ページOpens in a new tabからダウンロードできます。

Important:

HealthShare Health Connect および InterSystems IRIS for Health 製品のみが、Ensemble で利用可能な HL7 機能と DICOM 機能をサポートしています。InterSystems IRIS 製品は、これらの機能をサポートしていません。このため、Ensemble プロダクションで Ensemble の医療用機能を使用している場合、InterSystems IRIS へのインプレース変換は実行しないでください。むしろ、InterSystems IRIS for Health または HealthShare Health Connect に変換する必要があります。

  • 現在 Ensemble を医療開発の汎用データ・プラットフォームとして使用している、あるいは今後医療アプリケーションの開発を計画している場合は、InterSystems IRIS for Health 2020.1 以降に変換する必要があります。

  • Ensemble を統合エンジンとして使用している場合は、HealthShare Health Connect 2020.1 以降に変換する必要があります。

詳細は、"InterSystems IRIS for Health リリース・ノート" または "HealthShare Health Connect リリース・ノート"、および "InterSystems IRIS インプレース変換ガイド" と "InterSystems IRIS 導入ガイド" を参照してください。

InterSystems Reports

InterSystems Reports は、InterSystems IRIS および InterSystems IRIS for Health で使用できます。InterSystems Reports は Logi Analytics® の製品、Logi Report (旧名 JReport®) のリパッケージ版です。インターシステムズのデータベース製品で InterSystems Reports を使用する方法に関するドキュメントを提供する予定ですが、InterSystems Reports の使用を今すぐ開始したい場合は、https://www.jinfonet.com/documentation/Opens in a new tab にあるドキュメントで開始できます。InterSystems Reports の使用に関するご質問は、インターシステムズのサポート窓口Opens in a new tab (WRC) までご連絡ください。

クライアント言語の機能強化

InterSystems IRIS Native API for Python

このリリースでは、Native API for Python が導入されました。これは、InterSystems IRIS オブジェクト・インタフェースおよび SQL インタフェースの基盤となるネイティブ多次元ストレージ・データ構造への軽量 Python インタフェースです。Native API を使用すると、グローバル配列 (多次元ストレージ・モデルの基盤を形成するツリーベースのスパース配列) への直接アクセスが提供されるため、独自のデータ構造を実装できます。Native API for Python ではグローバル配列への直接アクセスが提供されるため、Python で非常に効率的なストレージ構造、そしてその結果、非常に効率的なアプリケーションを定義できます。詳細は、"Native API for Python の使用法" と "Native API for Python ReferenceOpens in a new tab" を参照してください。(初リリース 2019.2)

InterSystems IRIS Native API for Node.js

このリリースでは、Native API for Node.js が導入されました。これは、InterSystems IRIS® オブジェクト・インタフェースおよび SQL インタフェースの基盤となるネイティブ多次元ストレージ・データ構造への軽量 Node.js インタフェースです。Native API を使用すると、グローバル配列 (多次元ストレージ・モデルの基盤を形成するツリーベースのスパース配列) への直接アクセスが提供されるため、独自のデータ構造を実装できます。Native API for Node.js ではグローバル配列への直接アクセスが提供されるため、Node.js で非常に効率的なストレージ構造、そしてその結果、非常に効率的なアプリケーションを定義できます。詳細は、"Native API for Node.js の使用法" と "Native API for Node.js ReferenceOpens in a new tab" を参照してください。(初リリース 2019.2)

Node.js 用リレーショナル・アクセス

このリリースでは、Node.js 開発者に InterSystems IRIS データベースへの ODBC アクセスを提供します。(初リリース 2019.2)

Java および .NET ゲートウェイの再入

このリリースでは、フォワード・プロキシとリバース・プロキシにより、Java および .NET ゲートウェイで再入を使用できます。フォワード・プロキシとリバース・プロキシによって、より自由にオブジェクトを使用できます。プロキシ・オブジェクトまたは、もともと Java および .NET のオブジェクトを表すために InterSystems IRIS で作成されたオブジェクトは、メソッド呼び出しを伴う多くの状況で作成されます。プロキシ・オブジェクトを気にせずに、オブジェクトを作成することができます。(初リリース 2019.3)

Native API for Java および Native API for .NET の機能強化

グローバルを使用して InterSystems IRIS データにアクセスすることを可能にする IRIS Native API が拡張され、$LIST と参照渡しが追加されました。

  • $LIST により、データ構造を詳細に解析することなく、容易に反復処理することができます。 これにより、既存のアプリケーションから既存のグローバル構造にアクセスする Java および .NET アプリケーションの開発などのシナリオがサポートされ、さらには開発が簡素化され、パフォーマンスが改善されます。 (初リリース 2019.4)

  • パラメータを参照渡しすることで、簡潔なコードを使用してメモリ使用量の少ないアプリケーションを作成でき、パフォーマンスが向上します。参照渡しは、参照するルーチンと関数の間を双方向で通信する効果的なメカニズムを提供します。関数が仮リストにある変数を変更すると、対応する実リスト上の参照渡しの変数も変更されます。

JDBC を介した TSQL コードの実行

このリリースでは、JDBC から直接 Transact-SQL (TSQL) コードを実行する機能を提供します。

管理ポータルの新たな外観

このリリースから、管理ポータルの新しい、よりモダンな外観がスタートします。この最初のフェーズでは、メニューとボタンの外観が新しくなりましたが、機能の変更はありません。この新しい実装は、将来のストリーミングおよびユーザ・インタフェース向上の基礎となります。(初リリース 2019.2)

SQL の機能強化

どのリリースでもそうですが、InterSystems IRIS には、基盤となるソフトウェアの進歩や、業界標準および顧客のワークロードに対する継続的なベンチマーキングに基づく、SQL エンジンに対する多くの機能強化が含まれています。2019.1 リリースと比較して、高負荷時のクエリ・スループットが目に見えて向上する可能性があります。ベンチマーキングを拡張して特定の新しいユース・ケースを追加する機会がある場合は、それをインターシステムズと共有することをお勧めします。

新しいメジャー・バージョンにアップグレードすると、既存のクエリ・プランは自動的に凍結されます。これにより、ソフトウェアのメジャー・アップグレードによって既存のクエリのパフォーマンスが低下することがなくなります。パフォーマンスが重要なクエリの場合、パフォーマンスの改善が達成できたかどうかをテストする必要があります。

このリリースでは、以下の機能強化が行われています。

  • ユニバーサル・クエリ・キャッシュ

  • より多くのタイプのクエリと DML を並列化し (自動的に)、CPU 処理能力をより効率的に使用できるように、並列化エンジンを改善しました。(初リリース 2019.4)

  • -> 構文を使用して、シャード・クエリで暗黙結合を使用できるようになりました。(初リリース 2019.4)

  • システム管理ポータルの SQL エクスプローラ・ページから発行されたクエリは、バックグラウンドで実行されます。これにより、クエリのキャンセルが可能になり、Web 要求のタイムアウトを回避できますが、フォアグラウンドの実行に依存して現在のデバイスに書き込む特定の従来のストアド・プロシージャが、このログ情報を正しく表示しなくなる可能性があります。(初リリース 2019.3)

ユニバーサル・クエリ・キャッシュ

このリリースでは、すべてのクエリ (埋め込みクエリおよびクラス・クエリを含む) をキャッシュ・クエリとして保存できる、ユニバーサル・クエリ・キャッシュが導入されました。以前は、埋め込み SQL を使用する場合、現在のテーブル統計または新たに利用可能になったインデックスを取得するには、アプリケーション・コードをリコンパイルする必要がありました。現在は、すべてのクエリ・プランが 1 つのキャッシュで管理されており、適宜削除できます (クエリ、テーブル、ネームスペースごとに)。これにより、複数のサイトに導入されている場合に、アプリケーションが実際のデータ特性に適応する能力が大幅に向上しました。

また、すべてのクエリ・タイプが均等に、生成済みクエリ・コードに実装された効率的なデータ・アクセスを利用できるようになりました。

相互運用プロダクションの機能強化

Java および .NET でプロダクション・コンポーネントをコーディングするための新しい PEX フレームワーク

このリリースには、相互運用プロダクションの開発時に実装言語を選択できる Production EXtension (PEX) フレームワークが含まれます。このリリースでは、Java および .NET を使用して、ビジネス・サービス、プロセス、オペレーションに加え、インバウンド・アダプタおよびアウトバウンド・アダプタも開発できます。以前のリリースでは、ビジネス・サービスとオペレーションのみを、Java でのみコーディング可能で、管理ポータルで特別なコード・ジェネレータ・ウィザードを使用する必要がありました。PEX フレームワークは、Java および .NET コードを相互運用プロダクション・コンポーネントに接続する柔軟なプラミングを提供します。PEX を使用することで、最小限の ObjectScript コーディングまたは ObjectScript コーディングなしで、Java および .NET コードを接続できます。PEX パッケージには、以下のクラスが含まれます。

詳細は、"PEX : Java および .NET によるプロダクションの開発" を参照してください。

相互運用プロダクションでポートの使用を監視するポート・オーソリティ

ポート・オーソリティ・ユーティリティでは、インターチェンジ・システムでのポートの使用状況を監視できます。ポート・オーソリティは、複数のプロダクションとインスタンスでビジネス・サービスとビジネス・オペレーションを調べ、各システムでどのポートが使用されているかを判断します。新しいサービスおよびオペレーション用に空いているポートを特定して、特定ユーザのためにポートを予約できます。詳細は、"ポートの使用の管理" を参照してください (初期リリース 2019.3)。

X12 検証の機能強化

このリリースでは、次の 2 種類の拡張された X12 検証を提供します。

  • SNIP レベル 1 およびレベル 2 検証 — Workgroup for Electronic Data Exchange (WEDI) の Strategic National Implementation Process (SNIP) で開発された標準に従って X12 メッセージを検証します。

  • X12 要素検証 — (初リリース 2019.1.1 および 2019.2)

以前のリリースでは、SNIP 検証は使用できず、セグメント構造全体を検証できるだけでした。セグメントのコンテンツを検証するメカニズムはありませんでした。

SNIP では、以下を検証できます。

  • SNIP レベル 1 — セグメントが有効であること、セグメント順序が有効であること、要素属性が有効であること、数値データ要素に数値があること、メッセージが X12 ルールに準拠していること。

  • SNIP レベル 2 — HIPAA 要件 (必要な要素が存在すること、使用されていませんとマークされた要素が使用されていないこと、値がコード・テーブルに従っていることなど) を満たしていること

X12 要素検証では、以下を検証できます。

  • 必要なフィールドが存在し、すべてのフィールドがスキーマで許可されていること。

  • セグメント内のフィールド数、およびそれらがスキーマで許容されているとおりに繰り返されているかどうか。

  • フィールドおよびコンポーネントのデータ型が正しいこと。

  • フィールド値が指定されたコード・テーブルに従っていること。

  • フィールドおよびコンポーネントが長さ制限に従っていること。

詳細は、"X12 ビジネス・プロセスの設定" の X12 の検証を参照してください。

強化された X12 の DTL サポート

このリリースでは、インターチェンジ・エンベロープ、機能グループ、トランザクション・セットのスキーマを含め、X12 バッチ全体のデータ変換を定義できます。これにより、1 つのデータ変換を使用して X12 バッチ・メッセージを処理できます。サブ変換を使用する必要はありません。このリリースでは、ユーザ・インタフェースも改善されています。また、繰り返し要素の処理を容易にする便利な関数も提供されています。詳細は、"X12 データ変換の作成" を参照してください。

XSD ファイルからの X12 スキーマのインポート

以前のバージョンでは、X12 スキーマをインポートできるのは SEF ファイルまたはインターシステムズ専用の XML 形式からのみでした。このリリースでは、新しい XSD スキーマ・ファイルからも X12 スキーマをインポートできます。詳細は、"InterSystems IRIS への X12 スキーマのロード" を参照してください。

MQTT アダプタ

このリリースには、IoT アプリケーションで使用されることが多い MQTT (Message Queuing Telemetry Transport) プロトコルをサポートする MQTT アダプタが含まれます。詳細は、"プロダクション内での MQTT アダプタの使用法" を参照してください。

シャーディングの機能強化

簡素化されたアーキテクチャ

このリリースでは、シャード・クラスタのシンプルで簡単な設計図である、ノードレベルのアーキテクチャが導入されました。これは、新しい %SYSTEM.Cluster API を使用して構成できます。このクラスタ・アーキテクチャでは、最初の InterSystems IRIS 2018.1 リリースでシャーディングと共に導入された、さまざまな基本要素のレイアウトに関するベスト・プラクティスをいくつか実装しました。これにより、クラスタの導入と拡張が大幅に容易になります。ノードレベルのアーキテクチャは本質的に、既存のインフラストラクチャを活用するためのスマートな方法であるため、アプリケーション・コードに対して完全に透過的で、既存の導入を変更する必要はありません。詳細は、"スケーラビリティ・ガイド" の "シャーディングの要素" と "シャーディング API"、および "インターシステムズ・クラス・リファレンス" の "%SYSTEM.Cluster" のクラス・ドキュメントを参照してください。(初リリース 2019.2)

柔軟なシャード・スキーマ設計およびオブジェクトのサポート

このリリースでは、シャーディングでアプリケーションのスキーマ設計をサポートする方法に対して、次のような改善が加えられました。

  • 任意の 2 つのシャード・テーブルをコシャードできるようになりました。以前は、共通のユーザ定義シャード・キーを持つテーブルのみコシャードできました (つまり、Order および OrderLine テーブルのシャード・キーを、これらが結合されるフィールドである OrderID に明示的に定義)。このリリースでは、DDL の COSHARD WITH 構文または CoShardWith インデックス・キーワードを使用して、新しいテーブルと、システムによって割り当てられたシャード・キーを持つ既存のテーブルをコシャードできます。これにより、システムによって割り当てられたシャード・キーを使用する運用上のメリットを維持しながら、アプリケーションのスキーマを設計するうえでの柔軟性が著しく向上しました。詳細は、"スケーラビリティ・ガイド" の "テーブルの作成" と "InterSystems SQL の使用法" の "シャード・テーブルの定義" を参照してください。

  • 以前は、シャード・スキーマの設計は DDL を介してのみ行われていましたが、新しい "Sharded" クラス・キーワードを使用して、クラス定義を通じて永続クラス (テーブル) をシャードとしてマークできるようになりました。クラス・コンパイラが拡張され、コンパイル時にシャーディングと互換性のないクラス定義機能 (カスタマイズされたストレージ定義など) の使用に対して警告を発行するようになりました。詳細は、"InterSystems SQL の使用法" の "永続クラスの作成によるシャード・テーブルの定義" を参照してください。

  • オブジェクトのパラダイムを使用して、シャード・クラスを操作できます。つまり、%New() メソッドで新しいシャード・クラス・インスタンスを作成するか、%OpenId() メソッドで既存のシャード・クラス・インスタンスを開き、%Save() でこれらを保存できます。シャーディング・インフラストラクチャにより、新しいインスタンスがクラスタ全体に適切に分散されるようになり、アプリケーションに対して完全に透過的になります。このオブジェクト・コードは引き続き、クライアントが接続されているマシンで実行されることに注意してください。

これらのシャーディングの機能強化は、2019.2 で初めてリリースされました。

統合シャード・キュー・マネージャ

このリリースでは、統合シャード・キュー・マネージャにより、多数のクライアントがシャード・クラスタに対してクエリを実行する際の、シャーディング効率が向上しています。これは、シャードローカル・クエリごとに個別のプロセスを生成してシステムをあふれさせるのではなく、シャード・クエリ作業をキューに入れることで実現しました。効率的なアルゴリズムにより、利用可能なハードウェアとシステム負荷に基づいて、適切な数のワーカ・プロセスを使用してキューの作業が処理されます。

インフラストラクチャおよびクラウド導入の改善

このリリースには、インフラストラクチャおよびクラウド導入に対する、以下のような改善が含まれます。

  • Tencent Cloud のサポート — InterSystems Cloud Manager (ICM) では、InterSystems IRIS に基づき、Tencent Cloud で実行されるアプリケーションの、エンドツーエンドのクラウド・プロビジョニングと導入が可能になりました。(初リリース 2019.4)

  • バインド・マウントに加えて、Docker 名前付きボリュームがサポートされます。(初リリース 2019.4)

  • InterSystems Cloud Manager (ICM) での弾力的な拡張/縮小のサポート — 既存の構成を拡張/縮小して、より多いノードまたは少ないノードで再プロビジョニングおよび再導入できるようになりました。詳細は、"InterSystems Cloud Manager ガイド" の "インフラストラクチャの再プロビジョニング" と "サービスの再導入" を参照してください。(初リリース 2019.2。ノードレベル・アーキテクチャでの DATA ノードのスケール・アウトおよび COMPUTE ノードのスケール・イン/アウトは初リリース 2019.4)

  • 独自のコンテナをパッケージ化する際のユーザ・エクスペリエンスが向上しました。 (初リリース 2019.3)

  • InterSystems Cloud Manager (ICM) での、ノードレベルのシャーディングのサポート。(初リリース 2019.3)

  • コンテナは、root 以外の既定のユーザを使用します。これはコンテナのベスト・プラクティスで、セキュリティが向上します。(初リリース 2019.3)

  • ICM による、プライベート・ネットワーク上での作成および導入のサポート。このネットワークで、要塞サーバはプライベート・ネットワークをパブリック・ネットワークに接続し、サービス拒否攻撃に対する向上したセキュリティ保護を提供します。(初リリース 2019.3)

  • セキュリティ保護された RPC 通信でのサービス検出のサポート。(初リリース 2019.3)

  • ICM によるマルチリージョン導入のサポート。リージョン全体が機能を停止した場合でも、高可用性を提供できます。(初リリース 2019.3)

  • ICM をアップグレードして、導入されたシステムの情報を保持する機能。(初リリース 2019.3)

  • コンテナレス・モード — コンテナレス・モードを使用した Google Cloud Platform でのシャード構成の導入、およびコンテナレス・モードを使用した Ubuntu または SUSE ノードでの Web ゲートウェイの導入は、以前は制限されていましたが、現在は実行できるようになりました。(初リリース 2019.2)

新規の自動構成カスタマイズ

新しい InterSystems IRIS 構成機能では、開始する前に、InterSystems IRIS インスタンスの構成パラメータ・ファイル (CPF) をカスタマイズでき、開始時にカスタム構成が自動的に実装されます。この機能により、自動化が大幅に簡素化され、InterSystems IRIS での Kubernetes などの構成管理ツールの使用がサポートされます。この機能は、このバージョンの ICM にも含まれています。自動構成カスタマイズは、今後のバージョンで拡張される重要な新機能です。 (初リリース 2019.4)

分析の機能強化

このリリースでは、分析に対して以下の機能強化が行われています。

選択的キューブ構築

このリリースでは、選択的キューブ構築機能を提供します。これは、個別に構築するメジャーとディメンジョンを選択できる、InterSystems IRIS Business Intelligence の機能です。 キューブ全体を使用中止にしなくても、変更を加えて、選択的に再構築することができます。 また、何を再構築するかを把握できるように、ユーザ・インタフェースにより、追加または変更されたディメンジョンまたはメジャーに自動的にフラグが立てられます。

PowerBI コネクタ

InterSystems ユーザは、Microsoft Power BI を使用して InterSystems IRIS に保存されている表形式のデータとキューブ・データにアクセスできるようになりました。これにより、Power BI が提供するデータ視覚化機能と、InterSystems IRIS が提供する高性能のデータ管理およびクエリ機能を組み合わせることができます。コネクタは ODBC を利用していますが、ユーザは InterSystems 2019.2 以上に接続する際に、Power BI から直接 InterSystems IRIS BI キューブにアクセスすることもできます。2019 年 4 月リリース以降、コネクタは Power BI の一部として出荷されます。詳細は、"Power BI 向け InterSystems IRIS コネクタ" を参照してください。

ピボット・テーブル・プレビュー

このリリースには、Analytics ピボット・テーブル・プレビューが含まれます。これは、切り捨てられたデータ・セットに基づいて代表的なピボット・テーブルを表示するアナライザの新しいモードです。 これにより、完全な結果セットを分析するよりもずっと速く、ピボット・テーブルをプレビューできます。プレビュー・モードでは、結果セットが完全でないことを示す、[すべて表示] ボタンも表示されます。 [すべて表示] ボタンを選択すると、プレビュー・モードが自動的にオフになります。(初リリース 2019.2)

自然言語処理の機能強化

このリリースでは、自然言語処理に対して以下の機能強化が行われています。

  • InterSystems IRIS 自然言語処理 (NLP) では、英語の言語モデルで測定属性の値および単位情報を抽出できるようになりました。この情報は、強調表示によって視覚化したり、クエリと REST API を介して取得したりできます。(初リリース 2019.3)

  • このリリースでは、InterSystems IRIS 自然言語処理でのチェコ語のサポートが導入されました。以前からサポートされている他の 10 の言語と同様に、埋め込み NLP エンジンで、チェコ語で記述された自然言語テキストの概念とコンテキストも識別できるようになりました。(初リリース 2019.2)

データベースのパフォーマンスとスケーラビリティの向上

このリリースでは、データベース・エンジンが大幅に最適化されました。これは、非常に大規模なシステムでは特に重要で、非常の高い負荷を扱うためにシステムを拡張する能力が大幅に向上しました。

このリリースで変更された効率化の 1 つにより、グローバル内のデータ走査時の効率性が向上しています。頻繁にアクセスされるが、めったに変更されないメモリ内のデータベース・ブロックに対して、ブロック内のノードの検索を高速化するために、システムでノード・テーブルと呼ばれる最適化構造が自動的に構築されることがあります。これにより、特に、ノードへのアクセスがまばらまたはランダムに分散している場合、あるいは逆方向の照合順 (逆方向の $order/$query を含む) でノードにアクセスするパターンの場合、グローバル・アクセスが高速化されます。このためのメモリはデータベース・キャッシュ自体から取得され、通常は 1% 未満とごくわずかです。

その他の機能強化と効率の向上

各リリースで、インターシステムズは多くの効果的な改善とマイナーな機能強化を行っています。このリリースでは、次のような改善が行われています。

  • ジャーナル・パフォーマンスの向上。

  • ミラーリングされている環境の容易な構成。

  • Apache Spark の新しいバージョン 2.3 と 2.4 のサポート。

  • Web ゲートウェイでの既存の WebSocket サーバのサポートに加えて、WebSocket クライアントのサポート。

  • プロダクションのソース・コントロール — プロダクションをエンティティとしてチェックインおよびチェックアウトするためのソース・コントロール・フックが追加され、変更の追跡および構成管理が簡素化されました。 (初リリース 2019.4)

  • ペネトレーション・テストをサポートするためのホワイトリスト — 独自のセキュリティ・ペネトレーション・テストを実施するユーザは、CSP、Zen、REST に関連する誤検出を削減または排除できます。 (初リリース 2019.4)

  • .NET のサポートを .NET Core 2.1 にアップグレード。(初リリース 2019.3)

  • ODBC データベース・アクセスの効率の向上。(初リリース 2019.3)

  • ログ・メッセージへのアクセスを向上させる構造化ログ。(初リリース 2019.3)

  • アラートを取得するための API の改善。(初リリース 2019.3)

  • コンパイラが長すぎるグローバル名をテストし、エラーを報告。以前は、これらのグローバル名は通知なしで切り捨てられていました。(初リリース 2019.3)

メンテナンス・リリース 2019.1.1、継続配布リリース 2019.3、および後続のリリースには、ジャーナリングとミラーリングに関連する問題を修正した、JournalingGroup2019 として識別される一連の変更が含まれます。これらの問題に関連する変更は、SML2776、SML2781、SML2782、SML2783、SML2785、JO2990、JO3117、JO3137、JO3140、JO3141、RJF391、RJF392、HYY2362、HYY2364、および HYY2373 です。

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