構成マージを使用した InterSystems IRIS の自動構成
このドキュメントでは、構成マージを使用して InterSystems IRIS® データ・プラットフォームを導入または再構成する方法を説明します。
構成マージ
構成マージ機能により、InterSystems IRIS インスタンスの構成に対して、1 回の操作で任意の数の変更を加えることができます。これを使用するには、導入時または後の任意の時点で、宣言型の構成マージ・ファイルに加える変更を記録し、そのファイルをインスタンスに適用するだけです。簡単に使用できる構成マージにより、同じコンテナ・イメージまたはキットからさまざまな構成の複数のインスタンスを自動的に導入でき、同時に複数のインスタンスを再構成し、自動化されたクラスタの再構成またはその他の複数インスタンスの導入を可能にします。構成マージは、サポートされている任意の UNIX®、または Linux プラットフォーム (Linux クラウド・ノードを含む) 上の、コンテナ化された、あるいはローカルにインストールされた、任意の InterSystems IRIS インスタンスの導入で使用できます。UNIX/Linux と Windows の両方のプラットフォームで、構成マージを使用して実行中のインスタンスを再構成できます。
コンテナの導入に使用される構成マージ・ファイルの例は、"自動導入での有用なパラメータ" を参照してください。"構成パラメータ・ファイル・リファレンス" には、すべての InterSystems IRIS 構成パラメータの包括的な説明が含まれています。
InterSystems IRIS 構成
InterSystems IRIS インスタンスの構成は、インストール・ディレクトリにある、名前と値のペアの構成パラメータを含む、iris.cpf という名前のファイルで指定されます。導入後に初めて起動する場合も含め、インスタンスは、起動するたびにこの構成パラメータ・ファイル (CPF) を読み取って設定値を取得します。このため、CPF を変更してインスタンスを再起動すれば、いつでもインスタンスを再構成できます。
例えば、CPF の [config] セクションにある globals 設定は、インスタンスのデータベース・キャッシュのサイズを指定します。新たにインストールされたインスタンスの CPF の設定では、初期キャッシュ・サイズは合計システム・メモリの 25% に指定されています。これは、実稼働環境での使用を対象としていません。データベース・キャッシュのサイズを変更するには、インスタンスの CPF を任意のテキスト・エディタで開き、目的のキャッシュ・サイズを globals の値として指定してインスタンスを再起動します。ほとんどのパラメータは他の方法でも変更できます。例えば、globals の値は、管理ポータルを使用するか、永続クラス Config.configOpens in a new tab のメソッドを使用して変更できます。ただし、1 つのインスタンスに 1 回の操作で複数の構成変更を加える場合、および複数のインスタンスの同時構成を自動化する場合、これを実行できる一般的な方法はインスタンスの CPF を更新する方法だけです。
CPF の使用と内容については、"構成パラメータ・ファイル・リファレンス" を参照してください。
構成マージ・ファイル
構成マージ・ファイルは、必要な InterSystems IRIS 構成パラメータおよび値のサブセットを含む部分的な CPF です。構成マージでマージ・ファイルがインスタンスに適用されると、CPF を手動で編集して値を変更しているかのように、これらの設定がインスタンスの CPF にマージされ、値が置き換えられます。元の CPF に存在しないパラメータがマージ・ファイルにある場合、そのパラメータは適切な場所に追加されます。
例えば、シャード・クラスタ内のデータ・ノードと計算ノードは通常、他の目的のために構成されたデータベース・キャッシュよりもはるかに大きいデータベース・キャッシュを必要とし、共有メモリもより多く構成されます。導入時に大きなデータベース・キャッシュと多くの共有メモリを持つようにインスタンスを構成するには、あるいは既存のインスタンスをこのように再構成するには、globals パラメータ (データベース・キャッシュのサイズを指定) と gmheap パラメータ (共有メモリの容量を指定) に目的の値を指定した構成マージ・ファイルを適用します。インスタンスの CPF 内の既定値がこれらの値で置換されます。以下に、インスタンスの導入時に、マージ・ファイルを使用してこれらのパラメータを更新する方法について説明します。

マージ・アクション
構成パラメータの値の変更に加え、構成マージによって、多種多様な InterSystems IRIS オブジェクト (ネームスペースおよびデータベース、ユーザ、ロール、リソースなど) や、ミラーおよびミラー・メンバを作成、変更、削除できます。これは、[Actions] セクションにあるパラメータを使用して実行します。このセクションは、マージ・ファイル内でのみ有効で、インスタンスの CPF には表示されません (追加することもできません)。例えば、インスタンスにグローバル・マッピングを追加するには、マージ・ファイルに CreateMapGlobal パラメータを含む [Actions] セクションを含めます。システム・オブジェクトを作成、変更、削除するこのセクションのパラメータは、更新パラメータと呼ばれるパラメータ値を更新するパラメータと区別するために、アクション・パラメータと呼ばれることがあります。
アクション・パラメータを使用して、新しいインスタンスと既存のインスタンスの両方でオブジェクトを管理できます。アクション・パラメータで指定された操作はベキ等であり、変更が加えられる場合にのみ実行されます。具体的には、以下のとおりです。
-
指定したオブジェクトが存在する場合、作成アクションは実行されません。
-
指定したオブジェクトが存在しない場合、変更アクションは実行されません。(オブジェクトは存在するが、アクションがそのオブジェクトのプロパティに追加されない/そのプロパティを変更しない場合、アクションは実行されますが効果はありません。)
-
指定したオブジェクトが存在しない場合、削除アクションは実行されません。
-
オブジェクトが存在し、かつアクションがそのオブジェクトのプロパティに追加されない/そのプロパティを変更しない場合、構成アクションは実行されません。オブジェクトが存在しない場合、またはオブジェクトが存在し、アクションがプロパティに追加される/そのプロパティを変更する場合、アクションは実行されます。
アクションのパラメータは導入時に非常に有用です。例えば、ConfigMirror アクションと、CreateDatabase アクションの MirrorSetName および MirrorDBName プロパティを使用して、導入された複数のインスタンスをミラーとして構成し、導入後すぐに、ミラーリングされたデータベースを配置して、新しいミラーを完全に機能させることができます。一方、iris merge コマンドを使用した既存のインスタンスの再構成では、アクション・パラメータにより、直ちに変更を加えることができます。このパラメータを使用しない場合は、管理ポータルでの手順またはクラス・メソッドの呼び出しが必要になります。主な例としては、ModifyDatabase アクションの MirrorSetName および MirrorDBName プロパティを使用し (実行中のプライマリ・インスタンスで行う必要があります)、既存のミラーに新しいデータベースを追加することで、既存のミラーにアービターを追加するなどが挙げられます。
アクション・パラメータによって実行される操作は、Config および Security クラスと、SYS.DatabaseOpens in a new tab および %SYSTEM.SQL.SecurityOpens in a new tab クラスのクラスのメソッド、および 2 つの SQL コマンドを呼び出すことで制御されます。
アクション・パラメータの使用例は、"自動導入での有用なパラメータ" を参照してください。
管理されるオブジェクト別、対応するクラス別、処理順、および名前別のアクション・パラメータのリストは、[Actions] パラメータ・リファレンスを参照してください。
構成マージの用途
構成マージの主な用途としては、以下の 2 つがあります。
構成マージ機能のアプリケーションに関係なく、関係するマージ・ファイルをバージョン管理下に置き、インスタンスまたは複数インスタンス・トポロジの導入以降の継続期間を通して、すべての構成変更のレコードを提供することをお勧めします。
自動導入または再構成プロセスに構成マージを組み込むと、適用するマージ・ファイルを更新するだけでそのプロセスを更新できます。開発やテストなどの目的で使用される個々のインスタンスにおいても、ユーザはインスタンスの導入または再構成の前に適切なマージ・ファイルの最新バージョンを取得し、その構成を一元的な仕様に確実に一致させる必要がある場合があります。バージョン管理により、以前のバージョンのマージ・ファイルを選択して、古い構成に戻すこともできます。
導入での構成マージ
導入時に構成マージ・ファイルを適用することにより、導入したインスタンスを初めて開始する前に、その既定の構成を変更できます。これにより、同じイメージからさまざまな構成でコンテナを導入したり、同じキットから構成の異なるインスタンスを直接複数インスタンス・トポロジにインストールすることができ、導入後に目的のトポロジにインスタンスを構成する必要はありません。例えば、計算ノードを含むシャード・クラスタのコンテナ化された自動導入では、次の図に示すように、データ・ノード 1、残りのデータ・ノード、および計算ノードに、この順序で異なるマージ・ファイルを適用することができます。すべてのインスタンスが起動および実行されると、シャード・クラスタも起動され、実行されます。

同様に、ミラーを導入する場合、プライマリ、バックアップ、および非同期メンバに対して異なる構成マージ・ファイルを適用できます。ミラーリングされたシャード・クラスタでも、このアプローチを使用して簡単に導入できます。
構成マージを有効にするには、導入時に、環境変数 ISC_CPF_MERGE_FILE または InterSystems Kubernetes Operator (IKO) のこの目的に使用されるフィールドによって、マージ・ファイルの場所を指定するだけです。例えば、手動またはスクリプト化された導入で、以下のように指定します。
ISC_CPF_MERGE_FILE=/home/user/mergefiles/cmf_090821.cpf
マージ・ファイルを指定する具体的な方法は、使用する導入メカニズムと、インスタンスがコンテナ化されているかどうかによって異なります。
マージ・ファイルを使用した InterSystems IRIS コンテナの導入
InterSystems IRIS コンテナを導入する際、以下の方法で環境変数とマージ・ファイルを含めることができます。
-
導入に使用しているスクリプトまたは docker-compose.yml ファイルに含めます。
以下のサンプル導入スクリプトでは、ISC_CPF_MERGE_FILE で指定されているマージ・ファイルとライセンス・キーは、ISC_DATA_DIRECTORY で永続的な %SYS に指定された外部ボリュームにステージングされるため、コンテナ内部でアクセス可能になります。
#!/bin/bash # script for quick demo and quick InterSystems IRIS image testing # Definitions to toggle_________________________________________ container_image="intersystems/iris:latest-em" # the docker run command docker run -d -p 9091:1972 -v /data/durable263:/durable -h iris --name iris --cap-add IPC_LOCK --env ISC_DATA_DIRECTORY=/durable/irisdata --env ISC_CPF_MERGE_FILE=/durable/merge/CMF.cpf $container_image --key /durable/key/iris.key
Note:このドキュメントで示しているイメージ・タグは、例として紹介しているだけです。InterSystems Container RegistryOpens in a new tab (ICR) に移動して、最新のリポジトリとタグを参照してください。
このサンプルの docker-compose.yaml ファイルには、導入スクリプトと同じ要素が含まれます。
version: '3.2' services: iris: image: intersystems/iris:latest-em command: --key /durable/key/iris.key hostname: iris ports: # 1972 is the superserver default port - "9091:1972" volumes: - /data/durable263:/durable environment: - ISC_DATA_DIRECTORY=/durable/irisdata - ISC_CPF_MERGE_FILE=/durable/merge/CMF.cpf
-
マージ・ファイルをコンテナ・イメージに含め、環境変数を導入に使用されるスクリプトまたは Docker Compose ファイルに含めます。
インターシステムズ提供の InterSystems IRIS イメージによって開始し独自のコードと依存関係を追加することでカスタムの InterSystems IRIS コンテナ・イメージを作成する場合、Dockerfile で iris merge コマンドを実行し、イメージに含まれている InterSystems IRIS インスタンスを再構成できます。例えば、ネームスペースとデータベースをインスタンス (カスタム・イメージから作成した各コンテナ内のインスタンスに存在する) に追加する [Actions] パラメータを含むマージ・ファイルで、iris merge コマンドを実行します。このメソッドは、"コンテナ内でのインターシステムズ製品の実行" の "InterSystems IRIS イメージの作成" で説明されています。
コンテナ化されたインスタンスがコンテナに配置したマージ・ファイルを使用し続けるようにするには、スクリプトに ISC_CPF_MERGE_FILE を設定するか、このファイルの場所にファイルを作成します。永続的な SYS ボリュームに配置されたマージ・ファイルを使用して、上記のように、導入時に追加で別個のマージを実行することもできます。これを行う場合は、含まれているマージ・ファイルをインスタンスに適用した後、このファイルを削除するよう、Dockerfile にコマンドを追加します。
構成マージを使用した自動導入のユース・ケースの例は、"自動導入での有用なパラメータ" を参照してください。
マージ・ファイルを使用したキットからの InterSystems IRIS のインストール
キットから InterSystems IRIS をインストールする際、マージ・ファイルを手動またはスクリプトで適用するには、以下の手順を使用してインストールと起動を分離する必要があります。
UNIX® または Linux システムの場合:
-
以下のように、irisinstall または irisinstall_silent スクリプトの前に ISC_PACKAGE_STARTIRIS パラメータを付けて、インスタンスを起動せずにインストールします。
ISC_PACKAGE_INSTANCENAME="IRIS27" ISC_PACKAGE_STARTIRIS="N" /tmp/iriskit/irisinstall
-
以下のように、前に ISC_CPF_MERGE_FILE 変数を付けた iris start コマンドでインスタンスを起動します。
ISC_CPF_MERGE_FILE=/tmp/iriskit/CMF/merge.cpf iris start IRIS27
Windows システムの場合:
-
インスタンスをインストールして、起動します。例えば、以下のように実行します。
IRIS-2023.2.0.227.0-win_x64.exe /instance IRIS27 INSTALLDIR=C:\InterSystems\IRIS27
-
インスタンスが完全に起動したら、iris merge コマンド ("構成マージを使用した既存のインスタンスの再構成" で説明しているとおり) を使用して、マージ・ファイルを適用します。
iris merge IRIS27 C:\InterSystems\IRIS27\merge.cpf
InterSystems Kubernetes Operator による導入時のマージ・ファイルの使用
KubernetesOpens in a new tab は、コンテナ化されたワークロードとサービスの導入、拡張、および管理を自動化するためのオープンソースのオーケストレーション・エンジンです。InterSystems Kubernetes OperatorOpens in a new tab (IKO) は、IrisCluster カスタム・リソースで Kubernetes API を拡張します。このリソースは、InterSystems IRIS のシャード・クラスタ、分散キャッシュ・クラスタ、またはスタンドアロン・インスタンスとして、すべて任意でミラーリングした状態で、Kubernetes プラットフォームに導入できます。IKO は、InterSystems IRIS 固有のクラスタ管理機能も Kubernetes に追加して、クラスタにノードを追加するなどのタスクの自動化を可能にします。このようなタスクは、自動化されなければ、インスタンスを直接操作して手動で行わなければなりません。
IKO を使用して導入する場合は、Kubernetes ConfigMapOpens in a new tab を使用して 1 つ以上のマージ・ファイルを導入プロセスに統合します。詳細は、"InterSystems Kubernetes Operator の使用" の "構成ファイルの作成とその ConfigMap の提供Opens in a new tab" を参照してください。
構成マージを使用した既存のインスタンスの再構成
実行している複数のインスタンスに対する同じマージ・ファイルの適用を自動化することによって、これらのインスタンスすべてを同時に同じ方法で再構成でき、アプリケーションまたはクラスタ全体にわたって同じ一連の構成変更を適用できます。インスタンスごとにカスタマイズされている可能性があるため変更すべきではない設定がある場合は、それらの設定を更新しないようにすることができます。その場合、該当する設定をマージ・ファイルから除外し、変更しても安全で、変更することが望ましいとわかっている設定のみを含めます。前のセクションで説明したとおり、自動化された 1 つのプログラムを使用して、インスタンスのグループごとに (異なるミラー・メンバやクラスタ・ノード・タイプなど) 異なるマージ・ファイルを提供することもできます。
マージ・ファイルを使用したすべての構成変更の適用は、変更のプロセスを合理化するのに役立ち、インスタンスの構成に対する高度な制御を維持できます。ターミナルからの多くの個別の変更を、管理ポータルの複数のページで、またはインスタンスの CPF を手動で編集することによって行うのではなく、マージ・ファイル内の同一の構文を使用して、一度にすべての変更を実行することができます。マージ・ファイルをバージョン管理下に置くことで、構成履歴や以前の構成のリストアのオプションを確実に利用できます。
UNIX/Linux と Windows の両方のシステムで使用できる iris merge コマンドによって、マージ・ファイルが実行中のインスタンスに適用されます。Windows オペレーティング・システムでは、実行に OS 認証が必要です。以下のように実行されます。
iris merge instance [merge-file] [target-CPF]
説明 :
-
instance は、InterSystems IRIS インスタンスの名前です。
-
merge-file は、ファイル名を含む、マージ・ファイルへの絶対パスまたは相対パスです。merge-file が指定されていない場合は、ISC_CPF_MERGE_FILE 環境変数の値が使用されます (設定されている場合)。
-
target-CPF は、instance インスタンスのアクティブな CPF への絶対パスまたは相対パスで、iris.cpf という名前であると見なされます。target-CPF が指定されていない場合、既定では以下のとおりです。
-
コンテナ化されていないインスタンスの場合、ISC_PACKAGE_INSTALLDIR 環境変数 (設定されている場合) で指定されたディレクトリにある iris.cpf ファイル。ほとんどの既存のインスタンスでは、この変数は設定されていないため、対象の CPF の場所を明示的に指定する必要があります。
-
コンテナ化されたインスタンスの場合、ISC_DATA_DIRECTORY 環境変数で指定されたディレクトリにある iris.cpf ファイル。この変数が設定されていない (永続的な %SYS が使用されていないため) 場合は、ISC_PACKAGE_INSTALLDIR 環境変数 (この変数は常に InterSystems IRIS コンテナに設定されています)。
-
環境変数 ISC_DATA_DIRECTORY および ISC_PACKAGE_INSTALLDIR が設定されておらず、target-CPF が指定されていない場合、InterSystems IRIS はオペレーティング・システムのレジストリで target-CPF の場所を確認します。
-
以下の場合、マージは実行されません。
-
指定したマージ・ファイルが存在しない場合、または merge-file 引数が省略され、ISC_CPF_MERGE_FILE が存在しない場合。
-
指定されたターゲットの場所に CPF がないか、次の 3 つの条件すべてに該当する場合 : 1) ターゲットの場所が指定されていない、2) ISC_DATA_DIRECTORY または ISC_PACKAGE_INSTALLDIR が存在しない、3) オペレーティング・システムのレジストリに target-CPF のパスが定義されていない。
コマンドを入力すると、InterSystems IRIS ターミナルではユーザ名とパスワードの入力を要求します (OS 認証が有効になっていない場合)。認証が成功した場合のみ、コマンドの実行が完了します。マージに失敗した場合は、マージが失敗した行がターミナルに表示されます。任意のキーを押すとウィンドウを閉じることができます。マージが成功すると、成功のメッセージが 3 秒間表示された後、ウィンドウが自動的に閉じます。
CPF にマージされる一部の変更はすぐには適用されず、再起動が必要です。例えば、インスタンスの共有メモリ・ヒープのサイズを指定する gmheap パラメータの値の変更は、そのインスタンスが再起動されるまで適用されません。マージ・ファイルにそのようなパラメータが 1 つ以上含まれる場合、次のサンプル・スクリプトの抜粋のように、再起動の一部としてマージ・ファイルを適用する必要が生じることがあります。
# restart instance with the necessary parameters (all on one line)
sudo ISC_CPF_MERGE_FILE=/net/merge_files/config_merge.cpf iris stop IRIS restart
一方、iris merge コマンドを使用してマージ・ファイルを適用すると、再起動しなくても設定 (インスタンスの起動時に設定できないものを含む) をすぐに変更できます。"構成マージで、構成以上のカスタマイズは可能か" に記載している例では、既存のミラーにデータベースを追加しています。
コンテナが構成マージで導入される場合 ("マージ・ファイルを使用した InterSystems IRIS コンテナの導入" の説明に従って)、コンテナが実行されている限り、ISC_CPF_MERGE_FILE (コンテナ内で永続) で指定されたマージ・ファイルの更新が継続的に監視され、更新が発生すると iris merge コマンドによって直ちにマージされます。つまり、マージ・ファイルを更新することで、いつでもコンテナ化されたインスタンスの構成を更新でき、コンテナ化されたインスタンスとクラスタの再構成を容易に自動化できます。
構成変更の管理
導入において、または既存のインスタンスで、iris merge コマンドにより、または再起動時に構成マージを使用することに加え、管理ポータル、Config.* クラス、またはテキスト・エディタを使用してインスタンスの CPF を変更できます。これらの方法は通常、複数のインスタンスを再構成する場合ではなく、必要に応じて個々のインスタンスの設定を個別に変更する場合に使用します。複数のインスタンスを自動的に導入したり再構成する場合、推奨されるベスト・プラクティスは、すべての構成の変更をこの方法に限定することです。これは、例えば iris merge マージを使用して 1 つのインスタンスの 1 ~ 2 個のパラメータのみを変更するような場合にも当てはまります。そのようにして、使用するマージ・ファイルのバージョンを管理して保存することで、各インスタンスの構成のレコードを時系列的に維持できると共に、構成マージ以外の方法で加えた変更を構成マージで上書きしてしまう可能性を回避できます。
コンテナでは、ISC_CPF_MERGE_FILE 変数によって指定されたマージ・ファイルの継続的な監視およびマージにより、後者の可能性が非常に大きくなります (前のセクションの説明を参照)。これにより、構成マージとマージ・ファイルの一元管理リポジトリを使用すると、マージ・ファイルを更新するだけで、いつでも既存のインスタンスにさらに変更を適用することができます。ただし、マージ・ファイルに含まれる構成パラメータが導入時以降にコンテナ内のインスタンス上で別の方法で変更されている場合、更新マージによってこれらの変更が消去されてしまい、変更のレコードがまったく残らない可能性があります。すべての構成変更を構成マージに限定することで、これを回避できます (マージ・ファイルが存在しない場合は、起動時にエラー・メッセージが表示され、続行されます)。
変更を構成マージに限定しない場合、インスタンスの起動後に、以下のスクリプトのどちらかまたは両方を (例えば iris-main --after オプションを使用して) 自動化に含めることで、構成マージで不要な変更が行われる可能性を回避できます。
-
導入済みの各コンテナ内の ISC_CPF_MERGE_FILE 環境変数を削除する。(マージ・ファイルが存在しない場合は、起動時にエラー・メッセージが表示され、続行されます。)
-
各コンテナ内のマージ・ファイルを空のファイルで置き換える。
自動導入での有用なパラメータ
構成マージ機能を使用して、インスタンスの CPF 内にある設定を任意の組み合わせで更新し、[Actions] セクションで指定されているとおりにインスタンス上で特定の操作を実行することができます。いくつかの自動導入のユース・ケースは有用で、構成マージ機能と関連するパラメータの高度な性能を示す良い例となっています。このセクションでは、以下のようなこれらのユース・ケースについて説明します。
更新パラメータ
以降のセクションで説明するパラメータは、導入されたインスタンスを起動する前に、インスタンスの CPF の値を変更して、導入ソース (インストール・キットまたはコンテナ) の既定の CPF を更新するために使用するパラメータです。以下の各パラメータ名は、"構成パラメータ・ファイル・リファレンス" 内のリストにリンクされているため、パラメータの目的とその使用法の詳細を容易に参照できます。
既定のパスワードの変更
"コンテナ内でのインターシステムズ製品の実行" の "認証とパスワード" で説明しているように、[Startup] セクションの PasswordHash 設定を使用して、導入時にインスタンスの事前定義アカウントの既定のパスワードをカスタマイズすることができます。そうすることで、SYS の既定のパスワードを有効なままにしておくことに伴う重大なセキュリティ・リスクを排除できます(各事前定義アカウントのパスワードは、導入後に個別に変更する必要があります)。
[Startup] パラメータ | 指定する内容 |
---|---|
PasswordHash | 値の暗号化ハッシュとそのソルトに基づく、事前定義のユーザ・アカウントの既定のパスワード |
メモリの構成と割り当て
InterSystems IRIS インスタンスのメモリ使用率に影響するパラメータは多数あり、その最適な値は使用可能な物理メモリ、クラスタ内でのインスタンスのロール、関連するワークロード、およびパフォーマンスの要件によって異なります。
例えば、インスタンスのデータベース・キャッシュの最適なサイズ (globals パラメータを使用して指定可能) は、インスタンスのロールによって大きく異なる可能性があります。前述のように、通常、シャード・クラスタのデータ・ノードには比較的大きなキャッシュが必要です。しかしそのロール内であっても、最適なサイズはクラスタのシャード・データ・セットのサイズによって異なり、さらに実装されるサイズはリソースの制約のために最適な値よりも小さくなる可能性があります (詳細は、"スケーラビリティ・ガイド" の "InterSystems IRIS シャード・クラスタの計画" を参照してください)。また、データベース・キャッシュのサイズ設定は通常慎重に行う必要があるため、既定のデータベース・キャッシュ設定 (コンテナで提供される iris.cpf ファイル内の globals の値) は、インスタンスのロールに関係なく、意図的に実稼働環境に適さないものになっています。
以下の表に、CPF の [Config] セクション内にある、導入の一環として更新できるメモリ使用率のいくつかの設定を示します。
[Config] パラメータ | 指定する内容 |
---|---|
bbsiz | プロセスあたりのプロセス・プライベート・メモリの最大値 |
globals | データベース・キャッシュに割り当てられる共有メモリ (共有メモリ・ヒープからではない) |
routines | ルーチン・キャッシュに割り当てられる共有メモリ (共有メモリ・ヒープからではない) |
gmheap | 共有メモリ・ヒープとして構成される共有メモリ |
jrnbufs | 共有メモリ・ヒープからジャーナル・バッファに割り当てられる共有メモリ |
locksiz | 共有メモリ・ヒープからロックに割り当てられる共有メモリの最大値 |
これらのパラメータおよびメモリ関連のその他のパラメータの詳細は、"システム・リソースの計画と管理"、"メモリと開始設定"、"ジャーナル設定の構成"、および "ロックの監視" を参照してください。
SQL および SQL シェル・オプションの構成と SQL データ型のマッピング
CPF の [SQL] セクションにあるパラメータを 1 つ以上マージすることによって、導入するインスタンスの SQL および SQL シェルの設定を指定できます。管理ポータルの [SQL] ページ ([システム管理]→[構成]→[SQL とオブジェクトの設定]→[SQL]) で、これらの設定を確認および変更できます。CPF の [SqlSysDatatypes] および [SqlUserDatatypes] セクションを使用して、SQL システム・データ型と SQL ユーザ・データ型を、導入されたインスタンス上で InterSystems SQL の同等のデータ型にマッピングできます。SQL シェルの設定およびデータ型マッピングの詳細は、それぞれ "SQL シェルの構成" と "データ型 (SQL)" を参照してください。
更新パラメータの例
以下のサンプル CPF マージ・ファイルには、前のセクションで説明したいくつかの更新パラメータが含まれています。SystemMode パラメータは、管理ポータルの上部に表示されるラベルを指定します。
[Startup]
SystemMode=TEST
PasswordHash=FBFE8593AEFA510C27FD184738D6E865A441DE98,u4ocm4qh
[config]
bbsiz=-1
globals=0,0,900,0,0,0
routines=64
gmheap=256000
jrnbufs=96
locksiz=1179648
[SQL]
DefaultSchema=user
TimePrecision=6
[SqlSysDatatypes]
TIMESTAMP=%Library.PosixTime
アクション・パラメータ
以降のセクションで説明するパラメータは、導入 (または再構成) の一環として、インスタンスのさまざまなタイプのオブジェクト (データベース、ネームスペース、マッピングなど) や、ユーザ、ロール、リソースなどを作成、変更、削除するために [Actions] セクションに含めることのできるパラメータです。アクション・パラメータ (多くの場合、単にアクションと呼ばれます) の使用法は、"構成マージで、構成以上のカスタマイズは可能か" に説明されています。このセクションには、その他の構成マージ・ファイルの例が記載されており、"[Actions] パラメータ・リファレンス" にこれらの完全なリストが示されています。
すべての [Actions] パラメータのリストは、"[Actions] パラメータ・リファレンス" を参照してください。
セキュリティ・オブジェクトの作成、変更、削除
導入または再構成の一環として、セキュリティ・オブジェクトを作成および変更するには、以下の表で説明する操作を [Actions] セクションに含めます。
[Actions] パラメータ | 指定する内容 |
---|---|
CreateUser | 作成するユーザ・アカウントの名前とプロパティ。ModifyUser および DeleteUser も使用できます。 |
CreateRole | 作成するロールの名前とプロパティ。ModifyRole および DeleteRole も使用できます。 |
CreateResource | 作成するリソースの名前とプロパティ。ModifyResource および DeleteResource も使用できます。 |
GrantAdminPrivilege、GrantPrivilege | SQL 特権と SQL 管理特権を付与するユーザ・アカウント、付与する特権、およびそれらを付与するネームスペース。RevokeAdminPrivlege および RevokePrivilege も使用できます。 |
ModifyService | 有効または無効にするサービス。 |
CreateApplication | 作成するアプリケーションの名前とプロパティ。ModifyApplication および DeleteApplication も使用できます。 |
CreateSSLConfig | 作成する TLS/SSL 構成の名前、場所、およびプロパティ。ModifySSLConfig および DeleteSSLConfig も使用できます。 |
CreateLDAPConfig | 作成する LDAP 構成の名前とプロパティ。ModifyLDAPConfig および DeleteLDAPConfig も使用できます。 |
CreateEvent | 作成するシステム監査イベントの名前、プロパティ、およびステータス。ModifyEvent および DeleteEvent も使用できます。 |
セキュリティ・オブジェクトでのアクション・パラメータの使用法を説明するために、導入されたインスタンスに、以下の SQL 管理者ユーザの事前定義アカウントを追加するとします。
-
%Service_Bindings サービス (%SQL ロール) を介した SQL アクセスを持っている。
-
USER データベースに対する読み取りまたは書き込みが可能 (%DB_USER ロール)。
-
テーブル、ビュー、プロシージャ、関数、メソッド、クエリ、トリガを作成および削除でき (%DB_OBJECT_DEFINITION 特権)、USER ネームスペースで BUILD INDEX コマンドを使用できる (%BUILD_INDEX 特権)。
これを行うために、以下のように、CreateUser パラメータを使用してパスワードを持つユーザ・アカウントを作成して必要なロールを割り当て、GrantAdminPrivilege パラメータを使用してこれに必要な SQL 特権を付与できます。
[Actions]
CreateUser:Name=SQLAdmin,
PasswordHash="cec6638a357e7586fddfb15c0e7dd5719a1964e774cd37466fb0c49c05,
323cb89148c887166dd2be61c107710539af2c01b43f07dccc8d030ac2c1a8cf7c5ace4a00d57e3780f,10000,SHA512",
Roles="%SQL,%DB_USER"
GrantAdminPrivilege:Grantee=SQLAdmin,Namespace=USER,AdminPriv="%DB_OBJECT_DEFINITION,%BUILD_INDEX"
これらのアクション・パラメータによって実行される操作と、そのプロパティの値の詳細は、"認証とパスワード"、"インターシステムズの承認について"、および "SQL のユーザ、ロール、および特権" を参照してください。
セキュリティ・マクロ
InterSystems IRIS では、CMF の [Actions] セクションで使用できる一連のマクロをサポートしています。これらのマクロは、Security.ApplicationsOpens in a new tab、Security.ServicesOpens in a new tab、Security.SystemOpens in a new tab、Security.UsersOpens in a new tab クラスの AutheEnabled プロパティ、および Security.LDAPConfigsOpens in a new tab クラスの LDAPFlags プロパティに関連します。以下のマクロがサポートされています。
AutheEnabled マクロ :
-
AutheK5CCache — Kerberos 証明書キャッシュ認証を有効にします。
-
AutheK5Prompt — Kerberos パスワード・プロンプト認証を有効にします。
-
AutheK5API — Kerberos ユーザ名とパスワードによる認証を有効にします。
-
AutheK5KeyTab — Kerberos keytab ファイル認証を有効にします。
-
AutheOS — オペレーティング・システム認証を有効にします。
-
AuthePassword — パスワード認証を有効にします。
-
AutheUnauthenticated — 認証なしのアクセスを有効にします。
-
AutheKB — Kerberos ベース接続セキュリティ・レベルを有効にします。
-
AutheKBEncryption — Kerberos データ暗号化接続セキュリティ・レベルを有効にします。
-
AutheKBIntegrity — Kerberos パケット整合性接続セキュリティ・レベルを有効にします。
-
AutheLDAP — LDAP 認証を有効にします。
-
AutheLDAPCache — LDAP 認証の LDAP キャッシュ証明書を有効にします。
-
AutheDelegated — 代行認証を有効にします。
-
AutheLoginToken — ログイン Cookies の作成を有効にします。
-
AutheKerberosDelegated — Kerberos による認証を有効にして、代行認証を使用します。
-
AutheOSDelegated — オペレーティング・システムによるユーザの認証を有効にして、代行認証を使用します。
-
AutheOSLDAP — オペレーティング・システム認証と LDAP 承認を有効にします。
-
AutheTwoFactorSMS — ユーザに対して SMS による 2 要素認証を有効にします。
-
AutheTwoFactorPW — ユーザに対してワンタイム・パスワードによる 2 要素認証を有効にします。
-
AutheAlwaysTryDelegated — インスタンス認証で認証するユーザに対して、代行認証コードの使用を有効にします。
-
AutheMutualTLS — %Service_WebGateway の変更時に相互 TLS を有効にします。
LDAPFlags マクロ :
-
LDAPActiveDirectory — LDAP サーバが Windows Active Directory サーバであるかどうかを示します。
-
LDAPTLSConnection — LDAP セッションで TLS の使用を有効にします。
-
LDAPAllowISCLDAPCONFIGURATION — OS ベースの LDAP と複数のドメインを使用して、認証に使用する LDAP 構成を決定する場合、ISC_LDAP_CONFIGURATION 環境変数の使用を有効にします。
-
LDAPUseGroups — ロール、ルーチン、ネームスペースでの LDAP グループの使用を有効にします。
-
LDAPUseNestedGroups — ユーザの入れ子になった LDAP グループすべてが検索で返されるようにします。
-
LDAPUniversalGroups — すべての InterSystems IRIS インスタンスに関連する、LDAP サーバ上の属性を検索で使用できるようにします。
-
LDAPEnabled — LDAP 構成を有効にします。
-
LDAPKerberosOnly — LDAP 構成の場合のみ、Kerberos の使用を有効にします。
%Service_ComPort に対して、パスワード認証と認証なしのアクセスを有効にする例 :
[Actions]
ModifyService:Name=%Service_ComPort,AutheEnabled=$$$AuthePassword+$$$AutheUnauthenticated
LDAPFlags マクロを複数使用して新しい LDAP 構成を作成する例。LDAPBaseDN と LDAPBaseDNForGroups の値には “=” が含まれるため、値を引用符で囲む必要があります。
[Actions]
CreateLDAPConfig:Name=TestLDAP,LDAPBaseDNForGroups="DC=testcompany,DC=com",LDAPHostNames="testcompany",LDAPBaseDN="DC=testcompany,DC=com",LDAPSearchUsername="ldapadmin",LDAPSearchPassword=SYS,LDAPFlags=$$$LDAPActiveDirectory+$$$LDAPUseGroups+$$$LDAPUseNestedGroups+$$$LDAPEnabled
データベース・オブジェクトの作成、変更、削除
導入または再構成の一環として、データベース (ローカルとリモートの両方)、ネームスペース、マッピングを作成するには、以下の表で説明する操作を [Actions] セクションに含めます。
[Actions] パラメータ | 指定する内容 |
---|---|
CreateDatabase | InterSystems IRIS に登録するデータベースの名前とプロパティ、および作成するデータベース・ファイルのホスト・ファイル・システム上の場所。ModifyDatabase および DeleteDatabase も使用できます。 |
CreateDatabaseFile | (データベースを InterSystems IRIS に登録せずに) 作成するデータベース・ファイルのホスト・ファイル・システム上の場所。ModifyDatabaseFile および DeleteDatabaseFile も使用できます。 |
CreateNamespace | InterSystems IRIS で作成するネームスペースの名前とプロパティ。ModifyNamespace および DeleteNamespace も使用できます。 |
ModifyNamespace | 変更する既存の InterSystems IRIS ネームスペースの名前とそのプロパティ。CreateNamespace および DeleteNamespace も使用できます。 |
CreateMapGlobal | マッピングを作成するネームスペース、マッピングするグローバルの仕様、そのグローバルが存在するデータベース。ModifyMapGlobal および DeleteMapGlobal も使用できます。さらに、Create/Modify/DeleteMapRoutine および Create/Modify/DeleteMapPackage を使用して、ルーチンおよびパッケージのマッピングを作成、変更、削除できます。 |
データベース関連オブジェクトでのアクション・パラメータの使用法を説明するために、以下を行うとします。
-
データベースとそのリソースを作成してから、既存のネームスペースを変更し、作成したデータベースをグローバル・データベースにして相互運用性を有効にします。
-
2 番目のデータベースとリソースを作成し、そのデータベースを既定のグローバル・データベースにして、相互運用対応ネームスペースを作成します。
以下の例は、マージ・ファイルでこれを行う方法を示しています。
[Actions]
CreateResource:Name=%DB_%APPA,Description="APPA database"
CreateDatabase:Name=APPA,Directory=/database-path/APPA
ModifyNamespace:Name=APPA,Globals=APPA,Interop=1
CreateResource:Name=%DB_%APPB,Description="APPB database"
CreateDatabase:Name=APPB,Directory=/database-path/APPB
CreateNamespace:Name=APPB,Globals=APPB,Interop=1
後から、データベース APPA 内のグローバルおよびルーチンのネームスペース APPB へのマッピングを追加するとします。これは、マージ・ファイルで以下のように行うことができます。
[Actions]
CreateMapGlobal:Name="global-name(1):(101)",Namespace=APPB,Database=APPA
CreateMapRoutine:Namespace=APPB,Name=routine-spec,Database=APPA
これらのアクション・パラメータによって実行される操作と、そのプロパティの値の詳細は、"ネームスペースの作成/変更"、"ローカル・データベースの作成"、および "ネームスペースへのグローバル、ルーチン、およびパッケージ・マッピングの追加" を参照してください。
分散キャッシュ・クラスタの導入 (ミラーリングなし)
前のセクションのマージ・ファイルの例に簡単な変更をいくつか加えることで、分散キャッシュ・クラスタを導入するためのマージ・ファイルを作成できます。
データ・サーバの導入
以下のマージ・ファイルを使用して、ミラーリングされていないデータ・サーバを導入します。このマージ・ファイルは、アプリケーション・データベースと関連するリソースおよびネームスペースの作成に加え、以下を行います。
-
アクション・パラメータを使用して ECP サービスを有効にします。
-
更新パラメータを使用して、データ・サーバが受け入れることができる同時アプリケーション・サーバ接続の最大数を 16 に設定します。
前のサンプル・マージ・ファイルとの違いが強調表示されています。
# nonmirrored data server merge file
[Config]
MaxServerConn=16
[Actions]
ModifyService:Name=%service_ecp,Enabled=1
CreateResource:Name=%DB_%APPA,Description="APPA database"
CreateDatabase:Name=APPA,Directory=/database-path/APPA
CreateNamespace:Name=APPA,Globals=APPA
CreateResource:Name=%DB_%APPB,Description="APPB database"
CreateDatabase:Name=APPB,Directory=/database-path/APPB
CreateNamespace:Name=APPB,Globals=APPB
アプリケーション・サーバの導入
すべてのアプリケーション・サーバの導入に使用されるこのマージ・ファイルは、以下を行います。
-
更新パラメータを使用して、データ・サーバをリモート・サーバとして追加します。
-
Server および LogicalOnly プロパティを追加し、ローカル・データベースを作成するローカル・ディレクトリではなくリモート・サーバ上の既存のデータベースを指すように Directory 引数を更新して、前述の CreateDatabase アクションを変更します。
前のセクションのサンプル・マージ・ファイルとの違いが強調表示されています。
# app servers merge file
[ECPServers]
dataAB=dataserver-address,port,0
[Actions]
CreateResource:Name=%DB_%APPA,Description="APPA database"
CreateDatabase:Name=APPA,Server=dataAB,Directory=/database-path-on-dataserver-dataAB/APPA,ResourceName=%DB_%APPA,
LogicalOnly=1,
CreateNamespace:Name=APPDBA,Globals=APPA
CreateResource:Name=%DB_%APPB,Description="APPB database"
CreateDatabase:Name=APPB,Server=dataAB,Directory=/database-path-on-dataserver-dataAB/APPB,ResourceName=%DB_%APPB,
LogicalOnly=1
CreateNamespace:Name=APPB,Globals=APPB
これらのアクション・パラメータによって実行される操作と、そのプロパティの値の詳細は、"リモート・データベース" と "分散キャッシュ・クラスタの導入" を参照してください。
クラスタのデータ・サーバのミラーリング
1 つ以上の InterSystems IRIS ミラーを導入するには、異なるミラー・ロールに対して、それぞれに ConfigMirror アクション・パラメータを含む別個の構成マージ・ファイルを使用して、最初のフェイルオーバー・メンバ、2 番目のフェイルオーバー・メンバ、DR 非同期メンバ、および必要に応じてレポート非同期メンバの順に導入します。
1 つのマージ・ファイルとホスト名のマッチングを使用して導入することもできます。これにより、名前が必要なパターンに一致する各ホスト・セットに、どのメンバを導入するかが決まります。
このセクションでは、各アプローチの例と、ConfigMirror パラメータのよく使用されるプロパティを示す表を提供します。
ミラー構成の詳細は、"ミラーリングのアーキテクチャおよび計画" と "ミラーの作成" を参照してください。コンテナ化されたミラーの導入を計画する前、またはコンテナ化された既存のインスタンスをミラーに再構成する前は、必ず "InterSystems IRIS コンテナを使用したミラーリング" を参照してください。特に、フェイルオーバー用のコンテナまたは DR 非同期ミラー・メンバを起動する場合は常に ISCAgent が起動することを確認する必要があります。
別個のマージ・ファイルを使用したミラーの導入
別個のマージ・ファイルを使用した導入を計画する際、他のメンバを追加する前に、ミラー・プライマリとして構成されるインスタンスが実行されている必要がある点に留意してください。このため、他のインスタンスを残りのメンバとして導入する前に、このインスタンスが導入され、正常に起動されていることを確認する必要があります。
データ・サーバのミラー・メンバの導入
以下のマージ・ファイルは、以下を行うことで、分散キャッシュ・クラスタのデータ・サーバを DR 非同期メンバを持つミラーとして導入します。
-
ミラーを作成し、メンバを追加する ConfigMirror アクション・パラメータを含めます。
-
プライマリで、作成したデータベースをミラーに追加します (他のメンバに自動的に追加されます)。
前のセクションの対応するマージ・ファイルとの違いが強調表示されています。
# mirrored data server primary merge file
[Config]
MaxServerConn=16
[Actions]
ModifyService:Name=%service_ecp,Enabled=1
ConfigMirror:Name=CLUSTERAB,SSLDir=ssl-directory-path,
Member=primary,Primary=localhost,ArbiterURL=address:port
CreateResource:Name=%DB_%APPA,Description="APPA database"
CreateDatabase:Name=APPA,Directory=/ddatabase-path/APPA,
MirrorSetName=CLUSTERAB,MirrorDBName=APPA
CreateNamespace:Name=APPA,Globals=APPA
CreateResource:Name=%DB_%APPB,Description="APPB database"
CreateDatabase:Name=APPB,Directory=/ddatabase-path/APPB,
MirrorSetName=CLUSTERAB,MirrorDBName=APPB
CreateNamespace:Name=APPB,Globals=APPB
# mirrored data server merge file to add backup, DR async, read-only reporting async, or read-write reporting async;
# for ConfigMirror Member argument enter either =backup, =drasync, =rorasync, or =rwrasync as appropriate
[Config]
MaxServerConn=16
[Actions]
ModifyService:Name=%service_ecp,Enabled=1
ConfigMirror:Name=CLUSTERAB,SSLDir=ssl-directory-path,
Member=backup|drasync|rorasync|rwrasync,Primary=primary-address:,ArbiterURL=address:port
CreateResource:Name=%DB_%APPA,Description="APPA database"
CreateDatabase:Name=APPA,Directory=/ddatabase-path/APPA,
MirrorSetName=CLUSTERAB,MirrorDBName=APPA
CreateNamespace:Name=APPA,Globals=APPA
CreateResource:Name=%DB_%APPB,Description="APPB database"
CreateDatabase:Name=APPB,Directory=/ddatabase-path/APPB,
MirrorSetName=CLUSTERAB,MirrorDBName=APPB
CreateNamespace:Name=APPB,Globals=APPB
空のデータベースを作成するのではなく、既存のデータベースを ConfigMirror アクションによって作成されたミラーにコピーするには、以下のように、CreateDatabase アクションの Seed パラメータを使用して、コピーするデータベースのパス名を指定します。以下の例は、前述の例のいずれかのセクション (プライマリまたはバックアップ/DR 非同期) からの抜粋を変更したものです。
ConfigMirror:Name=CLUSTERAB,SSLDir=ssl-directory-path,
Member=backup|drasync,Primary=primary-address:,ArbiterURL=address:port
CreateResource:Name=%DB_%APPA,Description="APPA database"
CreateDatabase:Name=APPA,Directory=/ddatabase-path/APPA,
MirrorSetName=CLUSTERAB,MirrorDBName=APPA,Seed=/mnt/databases/DB1
CreateNamespace:Name=APPA,Globals=APPA
CreateResource:Name=%DB_%APPB,Description="APPB database"
CreateDatabase:Name=APPB,Directory=/ddatabase-path/APPB,
MirrorSetName=CLUSTERAB,MirrorDBName=APPB,Seed=/mnt/databases/DB2
CreateNamespace:Name=APPB,Globals=APPB
ミラーリングされたデータ・サーバを持つアプリケーション・サーバの導入
このマージ・ファイルは、強調表示されているように、[ECPServers] のリモート・サーバ定義アクションの末尾の 0 を 1 に変更するだけで、上記のアプリケーション・サーバのマージ・ファイルを変更します。これは、リモート・サーバがミラーで、フェイルオーバー後にアプリケーション接続を透過的に新しいプライマリに切り替え可能であることを示します。
# app servers merge file
[ECPServers]
dataAB=dataserver-address,port,1
[Actions]
CreateResource:Name=%DB_%APPA,Description="APPA database"
CreateDatabase:Name=APPA,Directory=/database-path-on-dataserver-dataAB/APPA,ResourceName=%DB_%APPA,
Server=dataAB,LogicalOnly=1
CreateNamespace:Name=APPDBA,Globals=APPA
CreateResource:Name=%DB_%APPB,Description="APPB database"
CreateDatabase:Name=APPB,Directory=/database-path-on-dataserver-dataAB/APPB/,ResourceName=%DB_%APP,B
Server=dataAB,LogicalOnly=1
CreateNamespace:Name=APPB,Globals=APPB
ホスト名マッチングを使用したミラーの導入
導入ホストの名前が -number (または正規表現 .*-[0-9]+$ として) で終了する場合 (iris-000、iris-001、iris-002 ... など)、または -number-number で終了する場合 (iris-0-0、iris-0-1、iris-1-0、iris-1-1 ... など)、1 つのマージ・ファイルから 1 つ以上のミラーを自動的に導入できます。そのためには、以下を行います。
-
必要なパターンに Map 引数 (別個のマージ・ファイル・アプローチで使用されていない) を設定します (既定では primary,backup ですが、primary,backup,drasync,... のように最大 14 の DR 非同期メンバを含めることもできます)。
-
Member および Primary 引数を auto に設定します。
例えば、以下の ConfigMirror アクション・パラメータを使用する場合、例の後の表に示すように、ミラー・メンバは適切な名前のホストに導入されます。
ConfigMirror:Name=AUTOMIRROR,SSLDir=ssl-directory-path,
Map=”primary,backup,drasync”,
Member=auto,Primary=auto,ArbiterURL=address:port
番号が 1 つのホスト名 | 番号が 2 つのホスト名 | ミラー・メンバのロール |
---|---|---|
mirror-000 | mirror-0-0 | プライマリ |
mirror-001 | mirror-0-1 | バックアップ |
mirror-002 | mirror-0–2 | DR 非同期 |
mirror-003 | mirror-1-0 | プライマリ |
mirror-004 | mirror-1-1 | バックアップ |
mirror-005 | mirror-1-2 | DR 非同期 |
ミラー・メンバ名が競合することなく複数の独立した InterSystems IRIS クラスタ間で通信できるようにするには、オプションの Ordinal プロパティを使用して、いずれかのクラスタのホスト名を数値でオフセットして重複を回避することができます。例えば、Ordinal を 100 に設定する場合、対応するホスト名は iris-100、iris-101、iris-102 ... となります。
また、以下の ConfigMirror アクション・パラメータを使用する場合、例の後の表に示すように、ミラー・メンバは適切な名前のホストに導入されます。
ConfigMirror:Name=AUTOMIRROR,SSLDir=ssl-directory-path,
Map=”primary,backup,drasync”,
Member=auto,Primary=auto,ArbiterURL=address:port
Ordinal=100
番号が 1 つのホスト名 | 番号が 2 つのホスト名 | ミラー・メンバのロール |
---|---|---|
mirror-100 | mirror-0-100 | プライマリ |
mirror-101 | mirror-0-101 | バックアップ |
mirror-102 | mirror-0–102 | DR 非同期 |
mirror-103 | mirror-1-100 | プライマリ |
mirror-104 | mirror-1-101 | バックアップ |
mirror-105 | mirror-1-102 | DR 非同期 |
ホスト名によるミラー・メンバの導入
前のセクションで示したように 3 つのマージ・ファイルを使用するのではなく、iris-001、iris-002、iris-003 のような連続する名前の 3 つのホストに対して以下の単一のマージ・ファイルを使用して、前述のような ConfigMirror アクションを組み込み、ホスト名マッチングを使用して 3 メンバのミラーリングされたデータ・サーバを導入できます。
# mirrored data server using single merge file and hostname mapping
[Config]
MaxServerConn=16
[Actions]
ModifyService:Name=%service_ecp,Enabled=1
ConfigMirror:Name=CLUSTERAB,SSLDir=ssl-directory-path,
Map=”primary,backup,drasync”,Member=auto,
Primary=auto,ArbiterURL=address:port
CreateResource:Name=%DB_%APPA,Description="APPA database"
CreateDatabase:Name=APPA,Directory=/ddatabase-path/APPA,
MirrorSetName=CLUSTERAB,MirrorDBName=APPA
CreateNamespace:Name=APPA,Globals=APPA
CreateResource:Name=%DB_%APPB,Description="APPB database"
CreateDatabase:Name=APPB,Directory=/ddatabase-path/APPB,
MirrorSetName=CLUSTERAB,MirrorDBName=APPB
CreateNamespace:Name=APPB,Globals=APPB
ConfigMirror の引数
以下の表に、よく使用される ConfigMirror アクション・パラメータの引数を示します。InterSystems IRIS の以前のリリースでは、これらの多くは CPF の [Startup] セクションのパラメータでした。そのため、表には、対応する以前の [Startup] パラメータの名前を示しています。
引数 | 別個のマージ・ファイルを使用して導入 | 1 つのマージ・ファイルとホスト名マッピングを使用して導入 |
---|---|---|
Name (以前は [Startup]/MirrorSetName) |
新しいミラー (プライマリを導入する場合) または参加するミラー (バックアップまたは DR 非同期を導入する場合) の名前 |
ミラーの名前 |
Map | (使用されていません) | ミラー・メンバとホスト名とのマッチングに使用されるパターンを設定します。既定は Map="primary,backup" です。 |
Member (以前は [Startup]/MirrorMember) |
導入時のミラー・メンバのロール (primary、backup、または drasync) |
ミラー・メンバをホスト名に自動的にマッチングするには、auto に設定します。 |
Primary (以前は [Startup]/MirrorPrimary) |
プライマリのホストの名前または IP アドレス |
ミラー・メンバをホスト名に自動的にマッチングするには、auto に設定します。 |
SSLDir (以前は [Startup]/MirrorSSLDir) | インスタンスのミラー TLS/SSL 構成のホスト上の場所、必要な認証局の証明書 (CAFile.pem) を含むディレクトリ、ローカル証明書 (CertificateFile.pem)、および秘密鍵ファイル (PrivateKeyFile.pem) | (前の列を参照。TLS 構成はすべてのホスト上で同一に配置されている必要があります。) |
ArbiterURL (以前は [Startup]/ArbiterURL) |
ミラー (プライマリの導入時) または既存のプライマリ (バックアップまたは DR 非同期の導入時) に構成するアービターのホスト (ホスト名または IP アドレス) とポート |
ミラーに構成するアービターのホスト (ホスト名または IP アドレス) とポート |
Ordinal | (使用されていません) | 独立したクラスタ間でホスト名が重複しないように使用する整数オフセット。既定値は 0 (ゼロ) です。 |
前述の表で示した引数に加えて SYS.Mirror.CreateNewMirrorSet()Opens in a new tab メソッドの MirrorInfo パラメータのインベントリ内の任意のプロパティを使用できます。例えば、UseSSL=1 の指定によってミラーに TLS 暗号化を要求したり、AllowParallelDejournaling=2 の指定によって並列デジャーナリングを有効にすることができます。